幼い頃、同性から性暴力を受けた山本さん。被害はその後の人生にも影響している=徳島市

 「タンスの奥底にふたをして、しまい込んでいるような感じ」。幼い頃に受けた同性からの性暴力の記憶について、徳島市の山本ひかるさん(30)=仮名、男性=は、そう表現した。女性観や恋愛観などに深く関わり、今も影響を及ぼしているという。

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 被害に遭ったのは小学1年の時。近所に住む5歳年上の男児からだ。自宅で2人きり、よくテレビゲームをして遊んでいた。ある日、失敗するたびに罰ゲームと称してズボンを脱がされ、「意味の分からない」行為をされて頭が混乱した。

 挿入を伴う性行為、レイプだったと後に理解した。当時は何となく性的な行為であると分かったものの、「相手の立場が悪くなるかもしれない」と周囲に打ち明けられなかった。継続的に被害に遭ったわけではなく、男児が中学に進むと疎遠になった。

 山本さんは「いわゆる『魂の殺人』と言われるような、深刻なダメージは受けていない」と言う。その一方で「『大したことない』『平気だ』と意識しようとしているのかもしれない」。

 振り返ると、同性からの性的行為を受け入れたという事実が、自身を苦しめたように感じる。「性的規範から逸脱し、女性や性に対する認知がゆがんでいるのではないか」。思春期を迎えた頃から、そんな不安が付きまとっている。

 異性愛者と自認し、女性と交際した経験もある。しかし、大人になった今でも女性は苦手。「相手が嫌がるような性的加害をしてしまうかもしれない」との恐怖感があり、男友達と過ごす方が気楽という。理性的であろうと心を砕く必要がなく、恋愛関係になる心配もないためだ。

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 性被害は山本さんの男性性を傷つけた。「タンスの奥底」にしまってあるはずの20年以上前の記憶が時折よみがえり、自身の深淵を突き付けてくる気がする。それでも冷静に受け止め、ばねにして生きたいと考える。

 「男性として女性に認められるのではなく、人間として認められる土俵で勝負をしようとしているのかもしれない」

 人権問題や社会問題に関心が高い。弱者に寄り添いたいと、仕事の傍らボランティア活動に熱心に取り組んでいる。「困っている人を助けて、揺るぎがちな自己肯定感を保っている」と静かに語った。

 男性の性被害 2017年の刑法改正で強姦(ごうかん)罪が強制性交等罪になり、男性も被害対象となった。18年版犯罪白書によると、男性が被害を受けた性犯罪事件(17年)は、強制性交等罪が15件、強制わいせつ罪が200件。県内では今年、男子高校生がトイレで強制わいせつ被害に遭った事件や、男子中学生が会員制交流サイト(SNS)でわいせつ動画を送らされた事件が摘発された。男性の被害者は一定数いるものの、公的相談窓口の多くは女性専用で支援の受け皿は十分でない。