国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、潮受け堤防の排水門を開けるよう命じた確定判決の無効化を国が求めた訴訟で、最高裁が国勝訴の二審福岡高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

 司法判断のねじれ状態は続き、法廷闘争はさらに長期化する見通しだ。

 開門を訴える漁業者と、開門禁止を求める国、営農者との溝は深いが、歩み寄りはできないのか。国は漁業者の不信を解き、納得が得られる和解の方策を見いだすべきだ。

 動きだしたら止まらない公共事業の典型とされる諫早湾干拓の歴史は古い。

 1952年、食糧増産を目的に長崎県が構想を立ち上げ、コメ余りや漁協の反対で打ち切られた後、86年に水資源の確保と防災に主目的を変更。国の土地改良事業として復活した。

 97年、潮受け堤防で湾奥部を閉め切り、672ヘクタールの農地を造成。2008年に営農が始まり、現在は35の経営体が野菜などを栽培している。

 赤潮が発生するなど漁業被害を受けたとして、有明海沿岸の漁業者が開門を求めて提訴したのは02年のことだ。10年に福岡高裁が開門を命じる判決を出し、当時の民主党政権が上告せず確定した。

 今回、最高裁が破棄した高裁判決は、漁業者が開門を求める根拠となった共同漁業権に着目。更新期限が13年に消滅したとし、それに伴って開門を求める権利も失われたため、確定判決は無効になったと断じていた。

 これに対して最高裁は、確定判決は更新期限後も共同漁業権が与えられることを前提にしていたとし、高裁の判断を否定した。

 指摘の通り、漁業権は実際に更新され、漁は続けられている。「漁業権消滅論」を掲げ、国側に立った高裁判決は形式的すぎる。破棄は当然だろう。

 一方で、裁判長は補足意見で「時の経過による事情の変化」によっては確定判決の無効化もあり得ると示唆した。

 これでは、確定判決で負った開門義務を長年履行せず、問題解決を先延ばししてきた国の姿勢を追認することになりかねない。

 国と漁業者はともに話し合いによる解決を望んでおり、高裁での差し戻し審では、和解協議が再び始まる可能性がある。

 これまでに国は、開門しない前提で有明海再生に向けた総額100億円の基金を創設する案をまとめ、それに沿う形で福岡高裁が和解勧告案を提示したものの、漁業者側は受け入れを拒否した。

 開門しなければ被害の原因を究明できないとする漁業者側は、全開ではなく一定レベルの開門によって当事者の利害を調整する和解案を最高裁に出している。

 疑問が多い事業を強行し、対立と混乱を招いた責任は国にある。新たな案の提示を含め、解決への道を粘り強く探らなければならない。