政府は消費税引き上げと歩調を合わせ、社会保障制度の改革論議を始めた。消費税を2%上げても、制度の安定維持は見通せないのが現実だ。

 安倍晋三首相ら閣僚7人と有識者9人による「全世代型社会保障改革検討会議」が発足し、初会合を開いた。財政や経済、社会保障、労働など省庁で仕切る各審議会の論議を官邸に移し替えた。

 目指す方向は「全世代型」でも、会議に集められた有識者の顔ぶれは、財界の重鎮やシンクタンク、名誉教授など。名のある高齢者ばかりである。

 社会保障ほど世代間の利害調整が難しいテーマはない。未来への不安をわが事として改革を願う気鋭の学者も多い。若い女性の視点も大切だ。本音の提言を吸い上げれば、国民の関心も集まる。この人選では、結論ありきの会合と高をくくられても致し方ない。

 会議に課せられた最大のテーマは、財源を確保するための実効策だ。曲折に満ちた財源論議は、遠回りの末に出発点に戻りつつある。

 そもそもは、旧民主党の野田佳彦政権時代に、与党の民主が野党の自民、公明と交わした「社会保障と税の一体改革」の3党合意だ。

 消費税10%への引き上げと、社会保障給付の見直しをセットで行うと法律で定めた。子育て世代も視野に「全世代型」を目指した。

 しかし、「増税」が反発を招き衆院選に惨敗、第2次安倍政権が誕生する。民主党政権時代を「悪夢」と呼ぶ安倍首相だが、結局、3党合意を白紙にはできなかった。

 一体改革のうち「税の改革」は、首相が「再引き上げは10年ぐらいはない」と明言したことで、一応の終息となった。一方、痛みを伴う「社会保障の改革」は、重い課題として残されたままだ。

 給付水準を下げれば有権者の批判を浴び、選挙や改憲に暗雲がかかる。理解を得やすい打開策として、首相が推し進めるのが高齢者の就労拡大である。具体的には、70歳までの雇用だ。

 「生涯現役社会」「人生100年時代」など次々と打ち出すキャッチフレーズは、高齢者を社会保障の支え手に変えるためのムードづくりだ。

 非正規雇用の低年金対策もますます急務となっている。中小企業のパートにも厚生年金加入を適用する方針だが、高齢者の就労と同様、企業側の反発が障害になる。

 改革の本丸とされる医療や介護分野は、まさに日々の生活と直結する。そこまで切り込む意気込みがあるのか甚だ不透明だが、何らかの具体策を示さないと、責任放棄とそしりを受けるだろう。

 社会保障費の膨らみを抑えるには、国民を巻き込んだ議論が必要だ。年金の「財政検証」の公表を遅らせるような、「不都合な真実」隠しは許されない。情報を開示し、丁寧な説明に努めなければ、国民の理解は得られない。