宮城 治男さん(みやぎ・はるお)NPO法人ETIC.代表理事。1993年、学生起業家のネットワーク「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」を創設。2000年にNPO法人化して代表理事に就任した。社会起業家の育成支援に取り組み、1000人を超える起業家を育成・輩出する。文部科学省参与、中央教育審議会臨時委員などを歴任。小松島市出身。

西條 晋一さん(さいじょう・しんいち)XTech代表取締役、エキサイト代表取締役社長。伊藤忠商事を経て2000年にサイバーエージェント入社。多くの新規事業、子会社の立ち上げに携わる。08年、同社専務取締役COOに就任。18年にXTech、XTechVenturesの2社を創業した。同年、エキサイトを買収した。阿波市出身。

近藤 洋祐さん(こんどう・ようすけ)電脳交通代表取締役社長、吉野川タクシー代表取締役社長。2010年に、祖父が社長を務める吉野川タクシーに入社。ドライバー経験を経て12年、代表取締役に就任した。妊産婦向け送迎サービス「マタニティタクシー」といった新サービスを展開。15年に配車システムの開発・提供と配車業務を代行する電脳交通を立ち上げた。徳島市在住。

 徳島を元気にする事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」の東京セミナーが、東京都港区の「SENQ(センク)六本木」であった。起業支援に取り組むNPO法人ETIC.(エティック、東京)代表理事の宮城治男さん(47)=小松島市出身、IT関連企業XTech(クロステック、東京)代表取締役の西條晋一さん(46)=阿波市出身、電脳交通(徳島市)代表取締役社長の近藤洋祐さん(34)の3人が、起業への心構えについて意見を交わした。当日の模様を紹介する。 

 宮城 近藤さんが起業し、事業を加速させるに至った背景は。

 近藤 タクシー業界は高齢化が進み、解決すべき課題が山積していると感じた。これからのことを考え、自分でどうにかしなければという思いだった。会員制交流サイト(SNS)を通して知った、東京のベンチャー起業家たちの影響もある。

 宮城 事業を立ち上げた後の苦労は。

 近藤 一日を乗り切るのが精いっぱい。当初から分からないことばかりで、起業の手続きのために公証役場や合同庁舎を回った。資金の運用は難しくなり、製品が売れるのかは分からない。霧の中をさまようような感覚で、現在に至っている。

 宮城 西條さんは、数多くの新規事業の立ち上げを経験している。

 西條 企業内で立ち上げるのと違って、自己資金での起業はやりたいことをやれるのがいい。株主や周囲の空気を読んで、自分の意に反することをするというストレスはない。

 宮城 そういうストレスは多くの人が抱えて生きている。課題を突破しようとする時や何かを創造する時、周囲との関係が足かせになる場合はあるのかもしれない。

 西條 年間で約300人の起業家と会うが、彼らはみんな生き生きしている。日々大変なことがあっても、かなえたい目標に向かっているからだろう。

 宮城 今は人生を創生していく時代。本当に魅力的な事業プランなら、クラウドファンディングなどでお金は集められる。今は自分が志す生き方を実現しようとすればできてしまう。

 西條 起業に対するハードルは下がっている。自由に生きられる環境が整っていて、起業すると、その自由を享受できる。

 宮城 1990年代は起業が大それたことだったが、今は変わった。高校生や大学生も、自分の興味のある分野の情報や知識をインターネットから集めて事業をしている。

 西條 好きなことを極めて生計を立てる生き方が増えつつある一方、多くの人は時代の変化に気付いていない。クラウドファンディングもいいし、ユーチューバーになって広告収入を得てもいい。会社をつくって上場を目指す方法だけでなく、自分に合った規模で始めればいいと思う。

 近藤 徳島を含む地方は、就職先を選ぶ時の選択肢が何年も変わらないように「こう生きなければいけない」という、考えの型が古い。事業に移住者の若者を巻き込んで、価値観の新陳代謝を図りたいと考えている。

 宮城 見方を変えると、地方での起業に大きなチャンスがあると捉えられる。時代の変化を知るための情報やネットワークチャンネルとつながっていると、地域に価値を提供できる存在になれる可能性がある。

 西條 オープンに他業種の人と交流したりSNSで情報発信したりしている人は、よく物を知っている。それが仕事の成果やプライベートの充実につながるケースは多い。やりたいことを発信していれば、チャンスが訪れる機会が増える。とにかく動くことが大事だ。

 近藤 実体験から言えるのは、アクションを起こさなければ、なりたい自分や目指したい将来像に近づかない。前向きに取り組んだ積み重ねが、大きな成果につながっていく。

 宮城 これから新しい挑戦を目指す人へメッセージを。

 近藤 新しい事業を実現するのに、地域は関係ない。人・物・金は集められるので、徳島で十分できる。得た情報を自分の目で見て判断し、手足を動かして納得できる結果を積み重ねていくことが大切だと思う。

 西條 行動が重要。例えばフリーマーケットアプリで物を売ってみる。すると、客とのコミュニケーション法や売るためのこつといった商売の基本が分かる。小さくても構わないので行動し、改善しながら続ければ必ず得られる物がある。

 宮城 小さくてもいいのでチャレンジしてほしい。本当に大切にしたいこと、やりたいことは何かを自分自身に問い掛け、ぴんとくれば、まずは一歩を踏み出してほしい。

<事業プランやアイデア募集>

 とくしま創生アワード実行委員会は、県内外から徳島の活性化につながる事業アイデアとプランを募っている。徳島の発展や、地域課題の解決、豊かさの創出につながる取り組みが対象。サポーターを務める県ゆかりの経営者らが審査や支援に携わる。

 本年度は、事業の実施段階や規模によって▽アイデア▽年間売り上げ(目標)額が1000万円未満の「プランⅠ」▽年間売り上げ(目標)額が1000万円以上の「プランⅡ」の3部門を設けている。

 締め切りは10月31日。募集概要は公式ホームページに掲載している。応募用紙もホームページからダウンロードできる。問い合わせは徳島新聞社内の実行委<電088(655)7331>。