徳島大の佐藤征弥准教授(55)が編集に協力した、晩年を徳島で過ごしたポルトガルの文人モラエス(1854~1929年)を紹介する書籍が同国で出版された。首都リスボン市のリスボン植物園にある日本ゆかりの植物を取り上げ、モラエスの著書から植物について描写した一節を紹介する内容。日本の自然や植物を愛したモラエスの人物像を広く知ってもらおうと、ポルトガルの顕彰団体などが企画した。
書籍は四六判、144ページ。アケビや竹、アジサイなど、日本ゆかりの植物63種をポルトガル語と英語で解説しており、植物名は漢字とカタカナ、ローマ字でも表記している。徳島大モラエス研究会会員で、植物学が専門の佐藤准教授は、日本で用いられている薬用成分や効能などの執筆を担当した。
解説文と共に、モラエスの著作「徳島の盆踊り」や「おヨネとコハル」「日本通信」の中から植物に関する文章を紹介。サザンカのページでは「徳島の盆踊り」から、晩秋を彩るサザンカが自宅の庭に咲き誇っている様子を描写した一文が添えられている。
日本では販売されていない。出版はモラエス協会とリスボン植物園による顕彰事業の一環。同園は現在、日本ゆかりの植物の説明板にモラエスの文章を添え、展示に合わせて園路を整備しており、これを記念して本をまとめることにした。
佐藤准教授は2015年、研究会の一行とポルトガルを訪れた際にモラエス協会会長から事業計画を聞き、協力を申し出た。「大の植物好きだったモラエスを通じて、両国の絆が一層深まればうれしい」と話している。