徳島市出身で「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」(SET)に所属する矢野奨吾さん(30)が、7~9月にフジテレビ系で放送されたアニメ「ギヴン」で声優初主演を務めた。同じロックバンドに所属する少年同士の恋愛を軸にした切ないストーリーで大きな話題になった「ギヴン」。主人公・佐藤真冬(まふゆ)の繊細な心情を見事に表現した演技と歌声で高い評価を得た矢野さんが、役に込めた思いや今後の目標を語ってくれた。【記事は全部で3ページあります】

写真を拡大 矢野奨吾さん
 やの・しょうご 1989年3月19日生まれ。徳島市出身。SETの研究生を経て2013年に入団。劇団公演やテレビドラマ出演の傍ら、14年に「遊☆戯☆王ARC-V」の沢渡シンゴ役で声優デビュー。代表作に「アイドルマスター SideM」岡村直央役、「ツルネ―風舞高校弓道部―」如月七緒役など。「ギヴン」の真冬役で初主演を務めた。

 ―初主演お疲れさまでした。改めて主役を任された時の感想を教えてください。

 ありがとうございます。2019年の目標がアニメ作品の主役を演じることだったので、オーディションに合格したという連絡をマネジャーさんから頂いた時は、涙が出るくらいうれしかったのと同時に、ホッとしました。

 第1話の収録前日はなかなか眠れず、とにかく緊張していました。収録当日はスタジオに向かう途中で「収録が明日だったらいいのにな」と思いましたが、この緊張が明日まで続くならやっぱり今日の方がいい!と思った時に少し吹っ切れて、肩の力がスッと抜けたのを覚えています。

 ―矢野さんのはかなげな声は真冬にピッタリでした。演じる上でどんなことを心掛けたのですか。これまでに演じてこられた役と比べて大きく違っていた点はありましたか。

 真冬にはとてもつらい過去があって、大きな傷を背負ったまま、その場から一歩も動けずにいました。それでも、考えや思いはしっかり持っていて、頑固な一面もあって、おとなしく内向的な性格ではありますが、ちゃんと芯のある人間だなと思いました。

 他にも、友達とバスケをして笑ったり、ひたむきに音楽にのめり込んだりしていく様子を見ると「どこにでもいる一人の男子高校生」なんだなという印象も持ちました。これは演じる上で常に大切にしてきたことです。

 受け身の役柄はこれまでも演じたことはありましたが、ここまでせりふに「…」が多い役柄は初めてでした(笑)。

 ―真冬と矢野さんで共通すると思う部分、正反対の部分は。

 好きなことに貪欲なところや、一生懸命になれるものがあると他のことが手に付かなくなるところは、少し似ているのかなと思います。反対だと感じる部分は、真冬は多くを語らず、どことなく大物感がありますが、僕はおしゃべりで小心者なところです(笑)。

写真を拡大 「ギヴン」で矢野さんが演じた主人公佐藤真冬(©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会)
 「ギヴン」あらすじ ギターの才能がありながら音楽に対する情熱を失いかけていた男子高校生上ノ山立夏(りつか)はある日、心に傷を抱えながらも不思議な魅力を持つ同級生真冬と出会う。立夏が偶然聞いた真冬の歌に心を動かされたことで、2人の距離は変わり始める。 

 ―劇中歌とエンディングテーマで歌唱も担当されました。

 この作品にとって真冬の歌がどれだけ重要かはオーディションの段階から分かっていたので、歌えてうれしいという気持ちよりも、プレッシャーの方が断然大きかったです。決まってすぐにボイストレーニングの回数を増やして、歌唱の基礎や技術を時間の許す限り学んでいました。

 楽曲を初めて聴かせていただいた時には、これは真冬のために作られた歌だと思いました。だからこそ技術以上に、真冬がなぜこの歌詞を歌っているのか、真冬ならどう歌うかなど、真冬からあふれ出す感情を一番に考えて、飾らず大切に歌おうと思いました。

 ―真冬として歌われる上でどんなことを心掛けたのですか。

 真冬が歌う歌には、過去と向き合って今を生きていくという確かな覚悟があるので、いわば告白のような、真冬だからこそ歌える歌にしなければいけないと思いました。

 そのためには技術はもちろん大切ですが、粗削りでも、声がかれてもいいから、真冬が抱えてきたもの全てを吐き出すように歌おうと心掛けました。

 ―数々の名作アニメを輩出してきた「ノイタミナ」枠でも初めて男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(BL)作品ということでしたが、演じる上で特別に意識されたことはありますか。

 特別、何かを意識したことはないです。他の作品で役を演じる時と同様、「ギヴン」の世界で精いっぱい、真冬として生きようと思って演じさせていただきました。

 ―切ない内容も相まって「ギヴン」には大きな反響が寄せられたと思いますが、お耳に届きましたか。

 原作ファンの方が日本だけでなく海外にもたくさんいらっしゃって、改めて「ギヴン」の人気を実感しました。それだけアニメ化への期待値が高い作品なので、アニメを見てより一層好きになってもらいたいですし、実際にそのようなご感想をツイッター等で拝見した時は本当にうれしかったです。

 ―アニメ「ギヴン」の放送は終了しましたが、映画化が決定しています。ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 「ギヴン」の物語はこれからも続いていきます。真冬の歌が、「ギヴン」(劇中で真冬たちが組んでいるバンド)の曲が、彼らの恋愛が、これからどんな音を奏でていくのか、見守っていただけたらと思います。