マラソンにアクシデントや誤算はつきものだ。むしろ、それをうまくしのいで走り抜くのも、醍醐味(だいごみ)だと言える

 思い出すのは、1992年のバルセロナ五輪である。金メダルを期待された谷口浩美さんは、レース中に転倒。シューズが脱げるという想定外の事態を迎えた

 それでも終盤、追い上げて8位に入賞。レース後のインタビューに「こけちゃいました。これも運ですね。精いっぱいやりました」と話したシーンが記憶に残る。その笑顔に、声援を送っていた私たちも救われたような気がした

 谷口さんがゲストランナーとして、アテネ五輪金メダリストの野口みずきさんらと共に阿波路を走る。きょうは、とくしまマラソン。年を重ねたランナーでも、鍛え抜き、一度身に付いたフォームは変わらないものだ。独特の走法に、91年の世界陸上東京大会を制した全盛期の姿を重ねる人も多いだろう

 11回を数える今大会は、競技性を高めるために、ケニアからの選手も招待した。2時間3分台の選手の走りを想像するとわくわくする

 ちなみに、小欄の同僚は足首を痛める不運に見舞われたが、強気にも参加するという。好漢自重せよ。でも諦めないで。家族や友達の応援を背に、いざレースへ。なだらかな吉野川沿いのコースも35キロを過ぎれば胸突き八丁。踏ん張れば、ゴールはそこだ。