国が自ら定めたルールを、自らないがしろにする。しかも地方分権に逆行する形で。こんな姿勢が許されていいのだろうか。

 総務省が、ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を引き続き除外すると決めた。国と地方自治体のトラブルを審査する総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」が除外決定を見直すよう勧告したにもかかわらず、これに従わなかった。

 そもそもこの係争委は、1999年の地方自治法改正で国と地方の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に変える地方分権の流れの中で設けられたものである。主導したのは総務省の前身の旧自治省だ。係争委の委員を任命するのも総務相である。

 自ら任命した委員が自分たちに「不都合な結論」を出したからと言って従わないのであれば、何のための係争委か分からない。今後、他の自治体が国との紛争事案を係争委に持ち込み、係争委が自治体側に有利な裁定を下しても、国がそれを聞き入れないなら法治国家としての統制が取れなくなってしまう。

 泉佐野市は、ふるさと納税の返礼品としてインターネット通販大手アマゾンのギフト券を高い還元率で贈るなどし、巨額の寄付を集めてきた。総務省は6月から「返礼品は寄付額の3割以下で地場産品のみ」という基準を定めた改正地方税法を施行し、改正前の寄付集めが目に余ったとして泉佐野市を除外した。

 係争委は、過去の行為で除外するのは新制度を定めた改正地方税法に反する恐れがあるとし、再検討を勧告していたわけだ。泉佐野市は今回の総務省の決定に強く反発、大阪高裁に提訴する構えをみせている。

 総務省と泉佐野市との対立ばかりがクローズアップされているものの、今回の問題で真に利害が対立しているのは地方自治体同士である。

 住民が居住地とは異なる他の自治体に寄付すれば、それに近い額が住民税などから差し引かれ、居住地の自治体の税収には穴が開く。

 特に東京23区のような地方交付税の不交付団体の場合、財政力の弱い自治体に適用されるような交付税での減収補填措置がなく、住民が行う居住地外への寄付は丸々、減収につながる。

 総務省は、地方全体に目を配る立場から、見せしめ的に泉佐野市のような自治体を除外することで、制度を健全に維持しようとしたとも考えられる。

 しかし、自治体に不利益を強いるなら、国は明確な法的根拠を示す必要があるのは当然だろう。今後の法廷闘争でも処分の根拠をどこまで示せるかが焦点となる。

 地方側にも問題はある。泉佐野市のような事例が出てくれば、国から「やっぱり地方は信用ならない」とみられてしまう。節度を持った対応を心掛けない限り、中央集権はいつまでも変わらない。