どんな粗暴な泥棒が入っても、これほど荒らされることはない。床上浸水に遭った家の中は、泥にまみれた調度品が、折り重なるように廊下を、部屋をふさぐ

 タンスをどかそうにも、衣類が水を吸い、引き出しを抜くにも一苦労だ。泥かきや被災家具の運び出しが終わっても、水没した家の乾燥に数カ月。柱や床、天井にこびりついた泥をそぎ落とし、さらに洗い、ようやく改築工事に入ることができる

 昨年、水害に見舞われた岡山県倉敷市真備町で気の遠くなるような作業を見た。屋外の泥が乾けば、土ぼこりになって宙を舞う。マスクや目を守るゴーグルは必需品だ。茶色に染まった町が一つ一つ機能を取り戻すのに、随分と時間がかかった

 北は岩手県まで。台風19号で未曽有の被害の出た東日本の被災地は、復興までに、どれほど汗を流さなければならないだろう。新幹線などのインフラも深刻なダメージを受けている

 台風への備えを、どちらかといえばそれほど考える必要がなかった地域である。7県の約50河川、約70カ所の堤防を決壊させた強大な台風は、地球温暖化が招いたとの見方がある。スウェーデンの少女、グレタさんの国連での警告がよみがえる

 危機は始まっている。防災力を強化するとともに、消極的といわれる温暖化対策を、もう一段加速させずにどうしよう。