独立リーグ日本一の興奮が冷めやらない中、徳島インディゴソックスにうれしいニュースが飛び込んできた。プロ野球のドラフト会議で2人、育成ドラフトで1人が指名された。徳島インディゴソックスからの指名は2013年から7年連続。この7年間の指名選手は13人に上り、国内独立リーグの15チームの中では、群を抜いて多い。一方、観客動員数は四国で最少、赤字額は最多。独立リーグのチームは経営が厳しく、福井ミラクルエレファンツを運営する会社が今シーズンをもって解散する。徳島インディゴソックスもいつ危機に陥ってもおかしくはない。守り、支えるのは県民の力でしかない。

 徳島インディゴソックスが誕生して以来、時間があれば球場に訪れている。今年の独立リーグ日本一をかけたグランドチャンピオンシップの第4戦、第5戦(最終戦)も観戦した。いずれも息詰まる熱戦で見応えがあった。特に第5戦の逆転劇と竹内裕太投手の気迫あふれるピッチングには引き込まれた。

 お世辞にも観客は多いとは言えない。それでも熱心なファンが詰め掛け、懸命に声援を送る。子供から高齢者まで層は広く、女性も多い。皆それぞれ応援したくなる何かがあるのだろう。

 優勝を決めた第5戦の試合終了後、観客がグラウンドに下りて選手と一緒に記念撮影した。選手との距離の近さは、独立リーグならでは。こんなシーンもあった。観客席から台風被害を受けた栃木県民へ応援のエールが送られた。「ガンバレガンバレ栃木、ガンバレガンバレ栃木」。球場はいつも温かい。

日本一になった後、ファンと一緒に記念撮影する徳島インディゴソックスの選手たち

 独立リーグの大きな目的の一つに、プロ野球のNPB(日本野球機構)入りの選手を育てることがある。それでいうならば、徳島は画期的な成果を上げているチームと言っていい。13年からは、育成ドラフトを含めて毎年指名選手を出している。13年以降の四国アイランドリーグplusに所属する他の3球団をみると、香川オリーブガイナーズは8人、愛媛マンダリンパイレーツと高知ファイティングドッグスは1人もいない。北信越や関東などのチームでつくるルートインBCリーグの11球団も、最多は埼玉武蔵ヒートベアーズと石川ミリオンスターズの各7人だ。徳島から指名された昨年の伊藤翔投手(現埼玉西武ライオンズ)、今年の上間永遠投手は、高校卒業後1年目。所属1年間で指名にまでこぎつけている。

ドラフトと育成ドラフトの指名を受けた(左から)平間、上間、岸の3選手

 一度野球を諦めた人の再挑戦の場にもなっている。今年1軍に定着した巨人の増田大輝選手(小松島高校出身)は大学中退後、とび職をしていたところ、周囲の勧めで野球を再開することを決め、徳島インディゴソックスに入団した。今年のドラフトで埼玉西武ライオンズから指名を受けた岸潤一郎選手は、明徳義塾高校時代、甲子園を沸かせたスター選手だったが大学を中退。「野球はしない」と決めていたが、徳島インディゴソックスで再びユニホームに袖を通し、プロ入りを実現させた。

 徳島インディゴソックスは14年に初の日本一になって以降、計3回独立リーグの頂点に立っている。NPBにも突出して選手を送り込んでいる。フロント、指導者、選手らの努力のたまものであることは言うまでもない。ただ、それだけ素晴らしい成績を収めながら、県民の関心が低いのが残念だ。

 18年シーズンの観客動員数は1万4096人で、1試合平均は403人。愛媛は2万2642人(1試合平均612人)、香川は2万2601人(611人)、高知は1万5198人(447人)で四国内最少だった。

 観客動員数やスポンサーの少なさから、18年の収支決算では、徳島インディゴソックスは1231万円の赤字。愛媛、高知は黒字、香川は308万円の赤字で、徳島の赤字額の多さが際立っている。

 独立リーグの各球団は厳しい経営を余儀なくされている。これまでにいくつかの球団が、誕生しては消えていった。話は飛ぶが、先日閉店が発表されたそごう徳島店は、県民が買い物に行かなくなったため売り上げが減少した。徳島インディゴソックスも県民の支えなくしては、成り立たない。

 野球に関心のない人もいるだろう。関心があってもスポンサーや観戦に至るほど魅力を感じない人もいるかもしれない。でも、どうだろう。夢を追い掛ける場だけでなく、実現させる可能性が徳島にある。若者の流出が指摘される中、全国から徳島に集まってくる。プロ入りは果たせなくても、退団後は徳島で就職する人もいる。そんな舞台があることは、県民の誇りであり、財産ではないだろうか。増田選手は育成ドラフトで指名された後、「徳島に球団があったおかげ」と存在の大きさを語っている。

「きたじまるしぇ」に参加した上間投手と岸選手

 ドラフト指名から3日後の10月20日、北島町で開かれたイベント「きたじまるしぇ」に上間投手と岸選手の姿があった。徳島インディゴソックスのブースでチームのグッズを販売したり、子どもたちと触れ合ったりしていた。徳島を離れても、プロ入りをつかんだ徳島のことは心に刻まれるだろう。独立リーグは夢をつかむ場でもあれば、夢を諦める場でもある。チームを去る人がいれば、新たに加わる人がいる。来年もまた、球場に足を運びたいと思っている。(卓)