天皇陛下が国内外に即位を宣明する「即位礼正殿の儀」が、きょう皇居・宮殿で行われる。皇位継承のお披露目に当たる一大慶事だ。

 儀式の準備と並行して二つの大きな出来事があった。いずれも、令和皇室の進路に影響を与えるだろう。台風19号の甚大な被害と、ラグビー日本代表の奮闘である。

 被災者への配慮から、即位礼に伴う祝賀パレードが急きょ延期された。妥当な判断だ。

 半年前、天皇陛下は「常に国民を思い、国民に寄り添う」と宣言された。上皇ご夫妻が築いた象徴像を自らも希求し、研さんに励むと誓われた。この誓約は、陛下にとって極めて重いものだ。

 即位関連の儀式は内閣が責任を負う国事行為であり、憲法上、天皇に決定権はない。とはいえ、パレードは国民から祝福を受ける行事。陛下が、今は祝ってもらう状況ではない、とためらうのは当然のことだ。

 政府は15日まで「淡々と準備を進める」(菅義偉官房長官)との立場だった。同日、宮内庁が両陛下の「お見舞いの気持ち」を発表すると、17日になって方針を一転させた。警備などの準備作業を勘案すると、ぎりぎりのタイミングだ。流れが変わったのは陛下の強い意向としか考えられない。

 被災者への気遣いは、単なる同情ではない。陛下は即位前、戦国時代の後奈良天皇が残した文書に感銘を受け、民を思う心が皇室の伝統であると実感された。

 宸翰と呼ばれる直筆文書には「私は民の父母として徳を行き渡らせることができず、心を痛めている」と自責の言葉がつづられており、陛下は「歴代天皇のなさりようを心にとどめる」と語っている。

 パレードは11月10日に実施されるという。皇室と国民の絆を深める意味でも、延期は良い選択だった。

 もう一つの出来事は、ラグビー日本代表の健闘と国民の熱い声援である。国際化時代を印象付け、令和皇室の活躍の広がりを示唆している。

 いろいろな国籍の個性豊かな選手が君が代を歌い、桜のジャージーに誇りを持ち死力を尽くした。改めて「日本人とは何か」を考えさせられる。

 急激な国際化が進み、外国人労働者の受け入れも加速している。宗教や文化、言葉の違いなど、多様性を尊重する機運は強まっていく。日本という国の輪郭が揺らぐとき、「日本国民統合の象徴」としての役割は、かえって大きくなるのではないか。

 わが国にゆかりを求める人々との絆を深め、愛される日本を築いていく。国際社会に日本をアピールし、世界平和や地球環境の維持に貢献する。それには、皇室の存在と国際感覚に富む両陛下の力が重要になる。

 170カ国以上の海外の賓客を招いた即位礼は、両陛下が主役となる大舞台。皇室の存在感を世界に発信する、またとない好機である。