国際オリンピック委員会(IOC)が、2020年東京五輪のマラソンと競歩の会場を札幌市に変更する案を示した。既に大会組織委員会とは合意しているという。

 とはいえ、マラソンは五輪の花形競技である。開幕まで10カ月を切った段階で、開催都市である東京都の了解を得ないまま、強引に方針を変更してもいいのか疑問だ。

 暑さ対策との理由は理解できても、なぜ札幌なのか、IOCは明確な根拠を明らかにしていない。こうした場当たり的な方針変更は、五輪運営に禍根を残しかねない。

 早速、札幌への変更で新たに生じる経費負担に関し、都や大会組織委などの対立が表面化している。

 五輪の経費負担を巡っては都、大会組織委、国、自治体が激しく綱引きをした16~17年の混乱が記憶に新しい。今回も協議が長引けば、大会運営に深刻な影響が及ぶのは避けられないだろう。

 当然ながら、国が経費を負担する事態になれば、広く国民の理解を得る必要があるのは言うまでもない。

 IOCは来週、東京五輪の準備状況をチェックする委員会を開く。その際、札幌開催の理由と実現可能性、新たに生じる経費負担の方策などを丁寧に説明し、関係団体の了承を得る必要がある。

 IOCがマラソンの開催地を変更した最大の理由は、暑さ対策だった。今月6日まで中東ドーハで行われた陸上の世界選手権では、深夜スタートにもかかわらずマラソンと競歩で途中棄権者が続出したのが決定打になった。

 持久系の種目をより涼しい環境で行うのは、選手はもちろん、スタッフや観客にとっても望ましいことだろう。ただし、札幌も年によって暑さは大きく異なる。開催地の変更で、全てが解決する保証はどこにもない。

 そもそも、札幌での準備を今から始めて万全の態勢が整えられるのかどうか。選手の宿泊先や輸送、テロ対策を念頭に置いた警備態勢、ボランティアを含めた数千人規模でのスタッフの確保など、膨大な作業が予想される。市民生活への影響も最小限に抑えないといけない。

 札幌では、積雪のために4月ごろまでコース設定が難しく、運営状況を確認するテスト大会が実施できない可能性もあると指摘される。

 各国のマラソン選手からも影響を懸念する声が上がっている。選手第一で運営を考えるのであれば、真夏の開催そのものを避けるべきだ。

 チケット購入者への対応も怠ってはならない。払い戻しに応じるのはもちろん、札幌での観戦を希望する人にはチケットを優先的に割り当てる仕組みなど、きめ細かな配慮が欠かせない。

 今回の開催地変更が、マラソンと同様に暑さ対策が必要なトライアスロンやビーチバレーなど他競技にも波及しないのかどうか。IOCは明確な方針を示してもらいたい。