人が住まなくなってから長い年月が過ぎたのだろう。杉林にひっそり古い廃屋がたたずんでいた=つるぎ町半田

 東みよし町水の丸の六地蔵峠から、つるぎ町半田へ向かう道中でハッとする光景に出合った。夕暮れで周囲が薄暗くなり、杉林が青みがかっていく中、一軒の廃屋が浮かび上がっていた。

 家の周りに立つ木の太さや、壁に張った樹皮の傷み具合などからみて、最近人がいなくなったとは思えなかった。かなりの年月がたっているのは間違いないだろう。

 近年、県内の山間部に行くと、このような光景をよく見掛ける。日が暮れてから帰る道中、年々、木々の間から見える明かりが少なくなっている。中山間地の急激な人口減、過疎化を実感する。

 数年前に那賀町と上勝町の境にある龍峠に近い東尾集落を訪ねたことがある。そこにも原形をとどめていないほど崩れた家屋があった。地元の人に話を聞くと、かつて宿を兼ねた商店だったと説明してくれた。

 古い写真も見せてもらった。そこには集落の在りし日の姿と、山の尾根に至る段々畑が写っていた。「昔、山を離れる人は、家の庭や畑にスギやヒノキを植えていったんでよ」と寂しそうに話していた。

 会話や写真を思い出しながら、目の前の廃屋に人がいた頃は、段々畑が続く集落の一角だったんだろうなと想像した。