欧州連合(EU)からの離脱を巡る英国の行方は、再び有権者の判断に委ねられることになった。

 混迷を続ける下院で、ジョンソン首相が提出した来月12日に前倒し総選挙を実施する特例法案が可決された。これを受け、下院はきょう解散し選挙戦が本格スタートする。

 2016年の国民投票から約3年半、離脱派と残留派に割れた議会は、結論を出せないまま時間だけが過ぎた。ようやくの感もあるが、与野党が混迷からの脱却を目指すことで一致したことは、前進だろう。

 総選挙は、離脱の是非を問う事実上の国民投票だ。各党は国民に向けて改めて離脱のメリット、デメリットを明確に示すとともに、今後の国の姿やEUとの関係について丁寧に説明する必要がある。

 7月にメイ前首相の後任に就いたジョンソン氏は10月末の離脱を公約に掲げ、取り決めなくEUを脱退する「合意なき離脱」も辞さないとの強硬な発言を繰り返していた。

 独善的な態度は与党内の反発も招き、党派を超えた「首相包囲網」ができたほどだ。

 一方で、したたかな一面もみせる。離脱条件を巡ってEU側と再協議し、EU加盟国アイルランドと英領北アイルランドとの国境管理問題などで合意を取り付けた。

 しかし、野党が多数を占める下院で承認を得られず、EUへの延期要請を余儀なくされた。このため、ジョンソン氏は3度にわたり総選挙法案を提出したが、いずれも否決されていた。

 今回、法案が可決されたのは、EU側が最長で来年1月末までの3カ月、離脱延期を決めたからだ。最大野党の労働党をはじめ主要野党は、延期が決まり、「合意なき離脱」の恐れがなくなったとして一転、賛成に回った。

 選挙の最大の焦点は、ジョンソン氏の率いる保守党が過半数を獲得して混迷に終止符を打ち、来年1月までに離脱を実現できるかどうかだ。

 ジョンソン氏は、離脱案でEUと合意した実績をアピールし、離脱実現への確固とした決意を訴える方針だ。

 これに対し、労働党は離脱の是非を問う国民投票の実施を掲げ、野党第3党の自由民主党はEU残留を主張するとみられる。

 最新の世論調査では保守党が他党を10ポイント以上引き離している。しかし、長引く政治混乱に国民や企業の間に不満が強まっており、支持が分散される可能性もあるという。

 半世紀近く加盟していたEUとたもとを分かつか、それとも一員にとどまるか。結果次第では、さらに迷走が続くことも予想される。

 国民投票以降、英国社会は二分され、経済も疲弊している。加えて、EU離脱によるさまざまな問題点も浮き彫りになった。今選挙は国の岐路を左右するばかりか、国際社会にも大きな影響を及ぼす。これまでにも増して国民の選択は重い。