「ど根性親子桜」の前で記念撮影する親子連れ。左が樹齢約80年の木=阿南市羽ノ浦町岩脇

 徳島県阿南市羽ノ浦町の岩脇公園内の桜並木「桜の馬場」で、火事に見舞われても生き続けるソメイヨシノが植わっている。焼けた後も枯れず、根元から新しい木が生えてきたことから、今では「ど根性親子桜」と呼ばれている。「子」の成長を見守る「親」のような姿が反響を呼び、花見シーズンは記念撮影する親子連れでにぎわっている。

 一対のソメイヨシノは、並木道の西入り口から東へ約30メートルの場所にある。高さ約8メートルの木の樹齢は約80年、約6メートルの木は約10年。傷一つ無い新しい木とは違い、古い木の幹は根元から高さ1・5メートルほどにかけて割れている。

 幹は約10年前、原因不明のぼやで傷付いた。白い煙が出ているのを通行人が気付き、住民グループ「岩脇公園を美しく志隊」代表で近くに住む新田文一さん(75)らが消火に当たった。火はすぐに消えたが、樹皮や幹の内部が黒く焦げてしまった。

 「何とか頑張って生きてほしい」。幼い頃から親しんでいた新田さんは幹をロープと支柱で倒れないように支えたり、樹皮がはがれないよう幹にロープを巻き付けたりした。古い木は枯れず、数カ月後には根元から新芽が出てきた。

 県立博物館によると、幹がダメージを受けたため、芽の成長を抑えるホルモンの分泌が悪くなり、新芽が出てきた可能性があるという。

 力強く生きるソメイヨシノに感動した新田さんは2、3年後に「ど根性親子桜」と命名。付近に看板を立てたところ、親子連れが記念写真を撮るようになった。

 今年も花見シーズンを迎え、見事な花を咲かせた。家族4人で記念撮影をしていた弓長実希さん(31)=同市羽ノ浦町中庄、会社員=は「まるで子どもに優しく寄り添っているみたい。親子桜のように温かい家庭を築きたい」と話していた。

 ソメイヨシノの平均寿命は50年。新田さんは「傷を負いながら80年も生きているのは子への愛情があるからだろう。地域のシンボルとして末永く元気でいてほしい」と話した。