テレビアニメ「Fate/stay night」「グランクレスト戦記」の主題歌などで知られる人気女性シンガー綾野ましろさんが、10月26日に徳島市であったアニメやゲームの祭典「マチ★アソビVol.23」でライブを行った。9月に約3年ぶりとなるアルバム「Arch Angel」を発売し、10月にはデビュー5周年を迎えた綾野さんが、ライブの感想やアルバムに込めた思い、5年間での変化と今後の抱負を語ってくれた。【この記事は全2ページです】

写真を拡大 マチ★アソビのライブでエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げる綾野ましろさん=10月26日、徳島市のあわぎんホール

 ―ライブお疲れさまでした。マチ★アソビ出演は4回目ですね。

 デビュー曲「ideal white」が、徳島にスタジオを置くユーフォーテーブルさんが製作した「Fate/stay night」の主題歌だったご縁で、2014年10月のVol.13以降、よく参加させていただいています。

 Vol.13の時は台風で会場が眉山から徳島市立文化センターに変更されたんですが、今回も台風で一度延期になったので、どうなるかと心配していました。来られて本当によかったですし、会場の皆さんが笑顔で迎えてくださいました。

 ―綾野さんの熱いパフォーマンスに会場は大盛り上がりでした。

 ライブ向けの盛り上がる曲が多いですし、海外でライブをすることが多いので、歌の途中でコールのタイミングをお伝えするなどして一緒に盛り上がっていただけるように工夫しています。今日もたくさんの方が来て、盛り上がってくださってうれしかったです。

 ―アニメでマチを盛り上げるという「マチ★アソビ」の趣旨についてどう思いますか。

 素晴らしいイベントだと思います。商店街にアニメ専門店のアニメイトさんが入っていたり、そこをアニメファンがコスプレをして歩いていたりして、街を挙げてアニメを大切に思っていることが伝わってきて、とても温かみを感じます。

 ―徳島の印象は。

 徳島で接する皆さんは「来年も来てね」と声を掛けてくださるなどすごく温かくて、私が歌える居場所の一つになっています。あとは地鶏の阿波尾鶏がすごくおいしくて、ずっと食べていられます。ご縁が続く限り来させていただきたいです。

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 ―3年ぶり2作目のフルアルバム「Arch Angel」はどのような作品ですか。

 タイトルは、天使の階級の一つで「大天使」という意味です。聴いてくださる方にとって天使のように喜びや悲しみに寄り添える楽曲を届けたいという思いで制作して、名付けました。

 ―収録されている新曲4曲のうち「TRUE KISS」は綾野さんには珍しいリアルな恋愛がテーマです。

 これまでにも大きな愛について歌った楽曲はあったんですが、誰かの体験を基にしたような恋愛の歌では世界観が狭まるかなという思いがありました。それでも、作詞をたくさんさせていただく中で、新しい挑戦をしてみようと思いました。

 今回はyukaricoさんとの共作なんですが、チェスやおとぎ話の中に出てくるようなものを歌詞に入れることで、単なる恋愛というよりは、大好きな2人なんだけど駆け引きを楽しんでいるような、そんなイメージに仕上がっています。

 ―同じく綾野さんが作詞を手掛けた「Unleash」はサビの解放感が印象的です。

 タイトルは「解き放つ」という意味で、自分の中で欠け落ちてしまった、まひした感情みたいなものを「FEEL」という名前の鳥に例えて、大切にしているんだけどいつかは解き放ってあげないといけないというストーリーになっています。

 ―綾野さんにも解き放ちたい感情がある?

 ありますね。具体的な何かに対する感情というよりは、生きている中で自分自身と葛藤することがたくさんあるんです。自分で狭めてしまっている自分の価値観みたいなものを、解き放ちたいという思いはすごくあります。

 ―「caelum」の歌詞は綾野さんの実体験が基になっているそうですね。

 タイトルは天空や空をイメージして付けたんですが、歌詞には水面、水槽、気泡(あわ)のように、水に関連するワードがたくさん出てきます。これは、私自身がプールの水の中から見上げた天空をイメージしているからなんです。

 小さい時にできていたことと、できなかったこと、大人になってからできるようになったことと、できなくなったことは、気付いていないだけでたくさんあると思うんですけど、そこを自分の体験も織り交ぜながら物語として書いています。

 ―綾野さんができなくなったことは。

 小学5年生くらいまでは水の中で呼吸ができていたんですが、ある日、突然できなくなりました。それ以外にも、5年生くらいの時って何でもできたし、どこへでも行けたし、「自分最強」みたいに思っていたこともありましたね。

 でも、息ができなくなってからすごく閉鎖的になって「これからも無くなっていくものがたくさんあるかもしれない」と考えて、失敗するビジョンみたいなものが見えるようになりました。それが大人になっていく階段だとは思うんですけど。

 ピーター・パンでいたい、大人になりきりたくないけど、今こういう歌詞を書いているのも少しずつ大人になっているからなんでしょうね。ロックテイストの中にもポップさや爽やかさもある仕上がりで、ライブで披露するのが楽しみです。

 ―表題曲「アークエンジェル」は荘厳な雰囲気のバラードです。

 「頑張ってたらきっとなんとかなるよ」ということを、元気に励まして歌うよりは、葛藤や辛さなどの気持ちを肯定して一緒に進んでいけたり、そういう話を打ち明けられたりする存在でありたいなという、私の気持ちをすごく表してくれている歌詞です。

 悲しいことや悩んでいることがある人に聴いてほしいですし、自分自身も歌いながら悩んでいる部分を許せるというか。そういう許せる人でありというのが今後の目標なので「アークエンジェル」は今後歌いながら進化していくと思います。