東日本を中心に広範囲で発生した台風19号の浸水被害から13日で1カ月となる。福島、長野など7県で71河川の堤防が決壊し、浸水面積は昨年7月の西日本豪雨を大きく上回った。徳島県内に目を向けると、主要10河川の堤防には決壊や越流の危険性がある「重要水防箇所(区域)」が384カ所あり、堤防総延長272・3㌔の約4割を占める。専門家は「堤防に全幅の信頼を置かず、決壊や越流も想定に入れた備えが必要になっている」と指摘する。
10河川の重要水防箇所(区域)は〈図〉の通り。国土交通省や県は毎年、出水期(6~10月)以降に河川の異常を点検し、決壊や越流の危険性がある場所をまとめている。
中でも決壊の要因となる堤防の「法(のり)崩れ・すべり」や漏水などの恐れがある場所は全体で96・7㌔(150カ所)に上り、堤防両岸の総延長の33・4%を占める。河川別では▽吉野川60・6㌔(57カ所)▽那賀川延べ20・4㌔(43カ所)▽桑野川延べ6・6㌔(16カ所)▽今切川2・9㌔(18カ所)▽旧吉野川1・7㌔(6カ所)-となっている。
河道の掘削などが進まないために流下能力を確保できず、堤防の高さが計画の最大流量に耐える水準を満たしていない箇所もある。全体では7・2㌔(11カ所)あり、最長は那賀川の2・9㌔(2カ所)。旧吉野川は1・7㌔(3カ所)、鮎喰川は0・8㌔(1カ所)。
徳島大大学院の武藤裕則教授(河川工学)によると、堤防は旧河道上にあったり、基礎部分に浸透性の良い砂利を使用していたりするため、漏水しやすい箇所が点在する。改修や補強をしても大規模な増水のたびに新たな危険箇所が生まれ、重要水防箇所の解消は難しいという。
国交省徳島河川国道事務所は「近年は4、5年に1度は大きな洪水があり、そのたびに危険箇所ができる」。県県土整備部は「緊急性の高い箇所から工事を進めるが、全て解消するにはコストも時間もかかる」と言う。
武藤教授は「『堤防は安全』との意識を改める必要がある」と話している。