国内外の踊り手らが集う「世界阿波おどりサミット」(徳島県、県観光協会主催)が2日、徳島市のアスティとくしまで初めて開かれた。「なぜ海外で踊るのか」と題した座談会では、米国など海外3カ国を拠点に活動する踊り連の代表が、踊りの魅力や連運営の課題、展望などについて意見交換した。
【登壇者】
米サンフランシスコ阿波っ子連 バールマン理美子連長
フランスパリ・繋(つながり)連 米村ボナン鮎子連長
米ニューヨーク連 西谷尚武連長
米シカゴ・美湖(みこ)連 長野尚子連長
米ロサンゼルス・南加徳島県人会青空連 松村誠二会長
ブラジルサンパウロ・レプレーザ連 長井アメリア連長
進行役 阿波踊り情報誌発行「猿楽(さるがく)社」 南和秀代表
―海外で阿波踊りはどう見られているか。
長野 2ビートが米国人に合っている。振り付けが派手なので受け入れられやすく、誰でもすぐ覚えられる。
松村 シンプルさに引かれ、踊りの輪に加わる米国人は多い。愛嬌のある笛や陽気な太鼓のリズムが独特のフィーリングを生み出している。おはやしに乗せられ、自然と体が動くようだ。
米村 フランス人は頭で踊り方を理解できるまで体が動かない。踊れるようになるまで時間がかかる。
長井 ブラジル人は美しい衣装に関心を持つ。リオのカーニバルで分かるように、身体表現が大好きだ。輪踊りへの参加者が多く、喜んでいる。
長野 簡単なように見えて、実際に踊ると難しい。美しく見せるには鍛錬が必要と分かり、その奥深さに魅せられている。
―なぜ海外で踊るのか。原動力は何か。
長野 観客から褒められると、やる気が出る。私たちが発するパワーを感じてもらえる限り続けたい。
西谷 海外で踊っているという意識はない。今住んでいる所で踊っている感じ。楽しいから踊る。
松村 県人会の結束を固める大切なツール。現地の人々との交流や、徳島をPRする手段でもある。
米村 美の意識が連によって違い、多様性が楽しい。美学の追究が、人の心をつかんで離さない。
―連を運営する上での課題は。
西谷 早く鳴り物を充実させ、生演奏で踊りたい。
松村 うちも演奏まで手が回らない。連員も資金も足りないためCDを使っている。まず笛や太鼓から育て、いつかぞめきを響かせたい。
バールマン イベントでうちわを配っている。そうすれば踊りの輪が広がりやすい。練習日を教え、連員になってもらえないかと声を掛けている。
長野 練習を嫌がるのに本番には出たいという若者が多い。そんな人は受け付けない。
バールマン うちは初心者でも浴衣を着て踊れるように配慮している。気持ち良く踊ってもらい、少しでも長く連にとどまってほしい。
長井 私たちも人数集めに困っている。40人が必要なイベントに半数しか来ないこともある。そんな中、夏から連員が笛や太鼓を習い始めており、来年から生演奏に挑戦する。
米村 うちの踊り子は5人。ユーチューブに動画を投稿しており、少ない方が顔や動きがしっかり見える。
バールマン 指導者がいない。有名連で踊った経験がないので、ユーチューブを参考にする連員が多い。
―各連ともその街で唯一の踊り連。異文化を根付かせようと、孤軍奮闘している。
バールマン 最初は衣装も楽器もなく、自分の蓄えでそろえた。
長野 有名連から、まだ着られる浴衣をもらった。新人に着せると、一人前に近づいたように感じて喜んだ。徳島からの気持ちがありがたかった。
松村 帰省した時は有名連に教わり、その動画をメンバーで共有している。いろんな連の踊りを吸収したい。
米村 振り付けを有名連にユーチューブで解説してほしい。
西谷 有名連は、われわれが最低限マスターすべき教則のようなものを示して。
松村 基礎を学べる専用サイトがあれば助かる。
―どう広めていけばいいか。
長野 国境や宗教を越えて受け入れられるのが踊りの良さ。全米や世界を巻き込んだ大会を開きたい。そうすれば、私たちの草の根運動の点が線となる。輪が広がると、支援も連員も増えるはずだ。
長井 ブラジルには日本文化を紹介する有名なイベントがある。最近、参加したブラジル人から踊りを教えてほしいとメールがあった。地道に活動し、そんな人を増やす。
米村 ヨーロッパでは知名度はまだ低く、連はうちしかない。だから伸びしろがある。これからどう広まっていくか楽しみだ。
―目標や夢を教えて。
西谷 ニューヨークの五番街を練りたい。
米村 フランス各地で踊りができる態勢を整え、ヨーロッパ中に仲間を増やしたい。
長野 徳島からシカゴに鳴り物の指導に来てほしい。多民族性を大切にしながら、世界の阿波踊りにしたい。
松村 これがカリフォルニアの阿波踊りだというものに形を変え、本場の徳島市で4日間踊りたい。
長野 ここで出会った海外の連で1本の動画をつくってはどうか。各地の観光名所をバックに踊れば面白い。今できる精いっぱいの踊りをつないで、世界中に発信しよう。
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サミットでは11団体の代表者によるシンポジウムもあり、各自の活動を報告した。台湾の愛好家団体「ヨウコソ アワオドリ タイワン」の王嘉宏代表の発言を紹介する。
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5年前に神戸市で見た阿波踊りに感動した。シンプルな2拍子とメロディー、そして元気と笑顔。これらの要素がまとまっているのが魅力だ。台湾でも踊りファンを増やそうと、団体をつくった。
鳴り物の音を耳にした途端、踊り始めた2歳児の動画を団体のフェイスブックにアップした。1週間もたたないうちに100万回以上再生された。
来年は台湾で正式な踊り組織を設立する。徳島の団体と協力し、阿波踊りの良さを世界に広めたい。