PAに並ぶトラック。運送業界では働き方改革による人手不足が懸念されている=兵庫県南あわじ市

 トラック運転手の働き方改革を巡り、国は労働時間の削減を協議するばかりで、賃金や就労環境の改善に関する議論が置き去りにされているー。徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」に、こんな声が届いた。県内の運送業者に話を聞くと、「働き方改革で運転手不足が一層加速するのではないか」との懸念が広がっていた。

 四国運輸局徳島運輸支局と徳島労働局は、県内の運送業者や荷主企業の担当者、大学教授らをメンバーに協議会を設け、トラック運転手の働き方を話し合っている。10月に徳島市であった会合では、荷物を積み降ろす際の待機時間「荷待ち」が長時間労働の背景にあるとして、その解消策を協議した。

 一方で、賃金に関する踏み込んだ議論はしていないという。その理由を、運輸支局の担当者に聞くと「課題だとは認識しているものの、まずは長時間労働の解消策を優先している」とのことだった。

 トラック運送業界は長時間労働の影響で人手不足が深刻化している。このため国は2018年から、4時間運転するごとに義務付けた30分の休憩時間を順守するよう、労働基準法の行政処分の基準を厳しくした。24年度からは、残業時間の上限を月80時間(現在は1日8時間以内)に規制する方針だ。

 しかし残業時間を規制すると、賃金が下がる運転手が増える可能性が高い。複数の運送業者によると、より多くの賃金を得たいと考える運転手は多く、残業が月100時間を超える運転手は少なくないという。

 こうした状況を受け県北部の運送会社の社長は「残業時間に規制が入ると運転手が仕事を辞めてしまい、物が運べなくなる」と不安を口にする。

 神戸淡路鳴門道の淡路島南パーキングエリア(PA、兵庫県南あわじ市)にいた阿波市の男性運転手(36)は「PAで寝泊まりしながら、年間300日以上はトラックに乗っている」と言う。労働時間として計算されない「休憩時間」が増えたことで月の手取り額が5万円減り、25万円になったからだ。

 男性はより多くの賃金を得ようと、生活の時間を削って仕事に充てていた。男性は過重労働の防止に理解を示しつつも、残業の上限規制が入ると手取り額が減るため不満もあるという。

 県トラック協会の郡信彦専務理事は「運転手の賃金を維持するには、運送料のアップが欠かせない。だが、荷主企業の力の強さがそれを妨げている。人手不足の解消は簡単ではない」と話した。

 

 【深刻化するトラック運送業界の人手不足】徳島労働局によると、トラック運転手が大半を占める「貨物自動車運転手」の9月の有効求人倍率は1・90倍で全業種平均の1・49倍を大きく上回る。厚生労働省の2018年賃金構造基本統計調査によると、運転手の年間所得は、全産業平均の491万円に対し、大型トラックが454万円、中小型が415万円。年間労働時間は全産業平均の2136時間に対し、大型が2604時間、中小型が2592時間と大きく上回る。