ユーコン川を下り、ドキュメンタリー映像を制作する新居さん=徳島市国府町の吉野川

 剣山頂上ヒュッテ従業員で元徳島新聞記者の新居拓也さん(31)=美馬市木屋平川井=が6月から、北米を流れるカヌーイストの聖地・ユーコン川で3000キロ余りの川下りに挑戦する。仲間と共に約3カ月かけてパドルをこぎ、雄大な自然や流域の文化にカメラを向ける。冒険の記録をドキュメンタリー映像として販売し、収益を流域の自然保護活動に役立てる。

 ユーコン川は、カナダ北西部のルウェリン氷河に源を発し、米国アラスカ州を緩やかに西に流れてベーリング海に注ぐ約3200キロ。美波町在住のカヌーイストで作家の野田知佑さん(80)が1980年代に雑誌や著書で魅力を紹介し、日本でも知られるようになった。

 新居さんは中学3年のとき、野田さんが吉野川で開いている「川の学校」に参加し、水面を自在に進むカヌーの面白さに引かれた。社会人になっても乗り続け、徳島新聞社を退職後の2016年夏に初めてユーコン川の736キロを下った。その旅で出会った米国人写真家ジョン・バンバリガーさん(55)に誘われ、今回のプロジェクトに加わった。

 メンバーはカナダ人や英国人ら7人。新居さんとバンバリガーさん、米国人女子大生キャシディー・ブラノンさん(22)の3人がカヌーやカヤックに乗る。別の2人が一部区間を同行し、残りの2人は旅をサポートする。

 一行は、川面の氷が解ける6月1日、テントや食料を乗せて源流近くを出発。手付かずの自然やクマ、ビーバーなどの野生動物、川沿いの古い街並み、サケ漁の様子などを撮影しながら下り、8月15日に河口に着く。

 

 ユーコン川流域では近年、地球温暖化の影響で雷雨が増えているとされ、落雷による森林焼失が深刻化している。メンバーはそうした状況に心を痛め、ドキュメンタリー映像の販売収益やプロジェクトへの寄付金を地元消防士らの活動に役立ててもらうなどし、自然保護につなげたい考えだ。

 新居さんは「長期にわたる川下りや自然ドキュメンタリーの制作は昔からの夢だった。ユーコン川の雄大な自然や文化を守る取り組みに貢献したい」と意気込んでいる。