任期満了に伴う阿南市長選は、元市議で新人の表原立磨氏が、現職で5期目を目指した岩浅嘉仁氏との一騎打ちを制した。

 30年余りの政治経験を持つ65歳の岩浅氏に対し、表原氏は市議を4年足らず務めただけで組織力も劣った。44歳の若さをアピールし、市政の流れを変えようと訴えたことが有権者を引きつけた。

 吉野川市長選でも、40歳の元県議が72歳のベテラン元県議を小差で破った。人口減少などで地域が衰退する中、閉塞状況を打破するために実績や経験より、若さや行動力に期待する有権者が増えているとも言えよう。表原氏は、市民の負託をしっかりと受け止めてもらいたい。

 選挙戦を振り返ると、当初は岩浅氏が優勢とみられていた。地元の県議3人と市議20人が支持したのに対し、表原氏を支援したのは市議3人だけ。表原氏はビラや会員制交流サイト(SNS)で政策を発信するなど草の根選挙に徹した。対照的に、岩浅氏は組織戦を展開したものの、十分に機能せず、最終盤に開いた個人演説会では空席が目立ったという。

 表原氏は表立った多選批判はせずに、財政悪化を招いているとしてハコモノ行政からの脱却を主張。公約には、給食を含めた幼児教育・保育の完全無償化、高齢者の移動・買い物支援の推進、小中学校のトイレの洋式化など、住民目線の施策を並べた。

 今後も大型事業を進めるのか、お金の使い道を変えるのか。有権者に分かりやすい選択肢を示したと言える。市長給与の50%カットは、トップ自らが身を削ることで行財政改革を断行しようという意気込みをうかがわせた。

 一方、岩浅氏は市政の安定を強調し、防災や医療など命を守る施策の充実を訴えた。

 「野球のまち阿南」を通じた交流人口の拡大、「光のまち阿南」のLEDを活用したにぎわい創出といった事業が評価される半面、巨費を投じて建設した市庁舎はハコモノ行政の象徴に映った。市議会は大半が市長派でなれ合いが目立ち、市民は多選の弊害を感じ取ったのではないか。

 当選したとはいえ、表原氏の主張からは、どのような市をつくっていくかというビジョンは見えなかった。8月の出馬表明時に打ち出した「市長任期の2期8年まで」「女性副市長の公募」は告示直前に取り下げ、政治家として未熟さを感じさせた。

 市を取り巻く状況は厳しい。羽ノ浦、那賀川両町を編入合併した2006年に約7万8千人だった人口は8千人近く減少。財政を潤してきた大型火力発電所や企業の税収も、橘湾石炭火電の減価償却の影響で固定資産税は、05年度の111億円から18年度は76億円にまで減っている。

 県南の中核都市にふさわしい活力をどう維持し、発展させていくのか。若さを生かした新たな発想で難題を克服してほしい。