税金を使った公的行事を私物化しているのではないか。

 例年春に東京・新宿御苑で開く首相主催の「桜を見る会」に、安倍晋三首相の地元後援会員が多数招かれ、首相の事務所がツアーの募集を仲介していることが分かった。

 近年、参加者や支出額が急増していることも明らかになっている。

 首相は招待客の人選への関与を否定し、政府も選定のプロセスは適正としているが、不透明感は拭えない。

 政府は急きょ、来年の開催中止を決めた。だが、それで幕引きとはいかない。誰をどんな理由で招いたのか、首相は丁寧に説明すべきだ。

 桜を見る会は1952年に始まり、東日本大震災などで中止になった年を除いて毎年開かれている。文化・芸能、スポーツ、政界など各界で功績のあった人を招いて慰労するとともに、親しく懇談するのが目的とされる。

 招待範囲は開催要領で定められ、皇族や国会議員、各国駐日大使などのほか、「各界の代表者等」としている。これに基づき、内閣官房と内閣府が各省庁の意見を踏まえて招待客を決めている。

 問題は「各界の代表者等」が拡大解釈できることだ。

 安倍首相は「自治会やPTAで役員をしている方と後援会に入っている方が重複することもある」と釈明したが、説得力に欠ける。

 参院予算委で追及した共産党の田村智子氏によると、今年の桜を見る会の前日、首相後援会の前夜祭が都内のホテルで開かれ、約850人が参加。翌日、バス17台で新宿御苑に向かったという。

 毎年、首相の地元事務所から桜を見る会の参加を募集する案内があり、申請すると旅行プランが提示される、と証言する後援会関係者もいる。

 菅義偉官房長官は、内閣官房の推薦者取りまとめに当たり、首相官邸や与党に推薦依頼をしていると明かした。

 首相など権力者を支援する人を優遇しているように見える。政治利用と言われても仕方あるまい。

 旧民主党政権時代を含め、歴代首相が催してきた桜を見る会だが、第2次安倍政権の発足以降、規模が年々拡大しているのも見過ごせない。

 内閣府の文書によると、2014年に約1万3700人だったのが、今年は約1万8200人に上った。支出額も約3000万円から約5500万円に伸び、20年度予算の概算要求では約5730万円と、5年でほぼ倍増した。

 政府が目安としているのは約1万人である。なのになぜ、こんなに増えたのか。

 首相は個々の招待客について、個人情報の保護やセキュリティーを盾に公表を拒んでいるが、それでは国民の納得は得られまい。

 中止決定は問題の重大性を認識したからだろう。公選法違反も疑われる事案だ。そもそも、多額の税金を使うべき行事なのかどうか。廃止も含めて検討すべきである。