大勢のお遍路さんが祈りを込めてたどる「四国遍路道」が、歴史的・文化的な由緒を持つ古道などの保存活用を呼び掛ける文化庁の「歴史の道百選」に選ばれた。

 四国遍路道は弘法大師空海ゆかりの四国八十八カ所霊場の巡礼路で、徳島県内では保存状態の良い鶴林寺道の石畳(勝浦町)など16カ所計約55キロが対象となった。

 四国遍路は、全国の巡礼者に心のよりどころとして愛され、近年は、海外からの旅行客も数多く訪れるようになってきた。2015年には日本遺産にも認定されており、県民が親しんできた遍路道の価値が確固たるものとして認められることは喜ばしい。

 県内では、鳴門の渦潮とともに、四国遍路の世界遺産登録に向けた動きも活発化している。今回の「歴史の道」選定は、その追い風ともなるだろう。

 ただ、単に世界遺産となることが大切なのではない。世界遺産にふさわしく整備・保全され、訪れる人に寄り添う道として受け継がれていくことが望まれる。

 四国遍路によって培われた「お接待」は、訪れたお遍路さんたちの心に潤いを贈っている。遍路文化は、そこに関わる多くの人たちの支えがあってこそだ。

 札所への順路を示す道しるべの整備も各所で行われ、10月には徳島商工会議所女性会が、阿波市土成町土成の県道沿いに石柱を設けた。また、阿南市加茂町の一宿寺から21番札所・太龍寺に向かう古い遍路道「かも道」を守る住民団体「加茂谷へんろ道の会」のように、自動車の普及によって利用する人が少なくなっていた古道を整備している人たちも少なくない。

 こうした地域住民や団体の活動は、遍路道を守り、さらに親しまれる道へと高めていく上で、とても心強い。

 一方で、遍路道沿いでのごみの不法投棄をはじめ、道行く人が胸を痛める問題も後を絶たない。一部の心ない行為を改めることが第一だが、遍路道全体を整備し、守っていくには、個々の力では限界がある。歴史の道百選に入ったことで、道の補修や説明板の設置に国からの補助が得られる。行政にも住民と一体となったさらなる支援や協力を望みたい。

 遍路道は信仰の場であると同時に、県内屈指の観光資源でもある。

 現在も札所には多くの参拝者が訪れているが、それをつなぐ遍路道が輝きを増せば、各札所の魅力も高まり、訪れた人たちの思い出を一層豊かにするだろう。急増する訪日外国人客を含め、より多くの人たちを引きつけるのではないだろうか。点から線、線から面へと広がり、ゆったりと楽しめる舞台を整えることで、低迷する県内宿泊客の増加も期待される。

 四国遍路が文字通り「世界の宝」となって愛されるよう、官民一体となって歩を進めたい。