太宰府天満宮をイメージしていると、その小ささに、いささか拍子抜けした。福岡県太宰府市の坂本八幡宮。令和の出典となった万葉集「梅花の歌」序文の舞台、大伴旅人の邸宅跡とされる 

 新元号が決まった4月、社務所もなかった神社が一躍、名所になった。その地に立つと、ひなびた雰囲気が万葉の世界を想起させる

 ここで旅人らは酒を酌み交わし、庭に咲く梅を詠み比べたのだろう。そんな華やいだ早春の光景を頭に描いていたのだが、『短歌研究』に載った品田悦一東大教授の論考を読み、印象ががらりと変わった 

 品田さんは、序文だけでなく短歌を含めた全体を見ると「権力者の横暴は許せないし、忘れることもできない」という旅人のメッセージが読み取れると指摘する

 梅花の宴の前年、旅人が信頼を寄せた長屋王が藤原氏の画策により自害させられる「長屋王の変」が起きている。旅人の作とみられる<雲に飛ぶ薬食むよは都見ば賤しきあが身またをちぬべし>には、「あいつらは都を散々蹂躙した揚げ句、帰りたくもない場所に変えてしまった」との藤原一族に対する憤りが込められているという

 安倍首相の通算在職日数があす歴代最長に並ぶ。旅人ならどう詠むだろう。大宰相の風格は感じない、長期政権の弊害が際立ってきた・・・そんな皮肉や批判を潜ませるのでは。