安倍晋三首相の通算在職日数があすで歴代最長となる。第1次政権を含めて2887日となり、明治・大正期に3回首相を務めた桂太郎の記録を抜く。

 記録更新は106年ぶりだ。ただ、現状は閣僚の相次ぐ辞任に加え、首相主催の「桜を見る会」による自身への疑惑、疑念も浮上しており、「歴代1位」の高揚感や感慨にふける余裕はないのではないか。

 長期政権の緩みとおごりに厳しい目が向けられている。一方で、自らが掲げたさまざまな重要課題は積み残されたままだ。

 自民党総裁任期が残り2年を切る中、どのような姿勢で政権運営に臨み、成果を上げようとするのか。安倍政治の真価が問われる局面である。

 安倍政権で特筆されるのは選挙に強いことだ。2014年と17年の衆院解散・総選挙で大勝し、今年7月の参院選で国政選挙での連勝を6に伸ばした。

 野党の力不足もあるが、安定して国民の信頼を得ていたことを裏付けるものだ。

 党の重鎮を主要ポストに据えて挙党態勢を構築し、官邸主導を推し進めたことも大きい。「安倍1強」につながった要因だろう。

 主要政策では、アベノミクスによるデフレ脱却をはじめ、「地方創生」「1億総活躍」「全世代型社会保障」と次々と大きな看板を掲げた。

 日本が直面する諸課題に正面から向き合う姿勢を演出してきたが、いずれも言葉が先行し、実を結ぶまでには至っていない。

 首相が「戦後日本外交の総決算」とするロシアとの北方領土交渉や、北朝鮮による日本人拉致問題は手詰まりの状態だ。悲願とする憲法改正の実現も見通せない。

 業績面で「レガシー(政治的遺産)は乏しい」と指摘されても仕方があるまい。

 目立つのは安倍1強の弊害だ。国会運営や政治手法は強引との印象が付きまとう。

 機密漏えいに罰則を科す特定秘密保護法(13年)や、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法(15年)を数の力で押し切ったのは、その最たるものだろう。

 政と官の関係もいびつになっている。森友、加計学園問題では「忖度」が批判にさらされた。公文書のずさんな管理体制や不適切な統計調査も次々と明らかになっている。行政の信頼を損ねかねない事態である。

 ところが、首相は丁寧な説明や幅広い合意形成をおろそかにし、疑惑の解明や問題解決に積極的に取り組む姿勢はみられない。

 国会軽視も目に余る。論戦を回避したり、質問をはぐらかすような答弁を繰り返したり。説明責任も果たさない不誠実な対応は官にも広がっており、憤りさえ覚える。

 政治への信頼が揺らいでいる。首相はこの状況を深刻に受け止め、自ら襟を正す必要があろう。