紅葉にはまだ少し早い国の特別名勝、高松市の栗林公園を歩いた。紫雲山を背景に、六つの池と、十三の築山を持つ回遊式大名庭園である。四季折々、それぞれに違った表情を見せる

 栗林とはいうものの、手入れの行き届いた千本もの松の美しさで知られる。一歩一景、雅趣に富む景色は江戸時代、1642年に入部した松平家が、もともとあった庭を修築、拡大し、100年がかりで完成させた

 水辺のカモやサギに近寄っても、のんびりと羽を休めたまま、一向に人を恐れない。野鳥まで、その場所を知っている。食い意地のはった池のコイには、説教の一つもたれたくなるが、こればかりはそんなものか

 歴代の藩主に「大茶屋」と呼ばれて愛用されたという「掬月亭」は、数寄屋風書院造り。名は唐の詩人于良史の「春山夜月」の一句、「水を掬すれば月は手にあり」にちなむ。すくった水に月が映り込んでいる、何ともいえず風流な光景だ。隅々まで作り込まれた庭園は、名前一つとっても隙がない

 山裾で景色を引き締める屏風のような石壁は、別名「赤壁」。三国志の古戦場になぞらえたともいわれる。流れ落ちる滝は人工。風流の陰に汗あり。昔は人力で水をくみ上げた

 外国人観光客も多い。それぞれに楽しそうなのが印象的だ。いいものをめでるのに国籍は関係ないらしい。