候補者名を訴えながら走る選挙カー。名前の連呼には理由があった=阿南市内

 選挙カーの拡声器で候補者名を連呼するのはうるさいだけで、集票効果があるのか疑問だ―。阿南市長選・市議補選が終わって10日。市内の有権者から徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」にこんな声が寄せられた。名前の連呼は法律上のやむを得ない理由があり、取材を進めると「一定の集票につながる」との研究結果があることも分かった。

 「○○です。よろしくお願いします」。各地を駆け巡る候補者の選挙カーから女性運動員らが連呼し、支援を呼び掛ける。阿南市長選・市議補選に限らず、選挙ではおなじみの光景だ。

 市議補選に出馬した40代の候補者は「大声で申し訳ないと思う。ただ、名前を出して手を振ってくれる人がどれくらいいるかで、反応のいい地区が分かる。反応が良ければ車を降りて有権者と話をする」と言う。

 名前を連呼する理由は公選法141条の3にある。「選挙運動に使用される自動車の上では選挙運動をすることができない。ただし停止した車の上で選挙運動のための演説をすること、車の上で選挙運動のための連呼行為をすることは、この限りでない」

 つまり、演説をするには車を止めないといけない。走行中は候補者名の連呼や、キャッチフレーズのような短い言葉しか認められていない。

 名前の連呼は「うるさい」「迷惑」などの声が上がっている。でも、効果を認める研究結果がある。大阪大大学院人間科学研究科の三浦麻子教授(社会心理学)ら4人の調査班は、2017年に「選挙カーでの名前の連呼には一定の集票効果がある」との論文を発表した。

 三浦教授らは15年の兵庫県赤穂市長選で、候補者の連呼の有無と選挙カーの位置情報などを調査した。その結果、名前を連呼した選挙カーが通った場所に自宅が近い有権者ほど、その候補者に投票した人が多かった。

 名前の連呼で得票率が上がる限り、候補者はやめないだろう。

 これについて鳴門教育大大学院の山本準教授(社会学)は「名前の連呼ではなく討論会を開くなどして、政策やまちの将来像の意見を戦わせる選挙運動こそが、本来あるべき姿だ」と指摘する。

 演説会や討論会が支持につながるとなれば、連呼中心の候補者の行動は自然と変わるに違いない。選挙運動がどう変化するかは、有権者に懸かっているともいえる。