考えてみると『ガリバー旅行記』の記述は、どこか言い訳がましい。<もしもすでに書かれていたとしても、同じ国を訪れた旅行家が同じものごとを題材にとりあげるのは当然のなりゆきであり、非難されるはずもない>(山田蘭訳)

 慶応大の研究者が、江戸時代初期の御伽草子『御曹司島渡』『蓬莱山』と『ガリバー旅行記』(1726年)の類似性を指摘する新説を発表した。長崎からオランダへ渡った作品が、英国の作家スウィフトに影響を与えた可能性があるという

 源義経がさまざまな島を巡る『島渡』には、小人や巨人、馬人の島、『蓬莱山』の絵巻には、空中に浮かぶ島や不老不死。ここまでそろえば無関係という方が不自然

 冒頭の一文は、ガリバーが天空の島「ラピュタ」から日本に渡航する直前、経由地での経験がいかに興味深かったか語るくだりにある。さらにこう続く。<日本の著述家が、すでにストラルドブルグに関する本を書いているのでは>

 ストラルドブルグは不死の人。ただ、残酷なことに老化するのは普通の人と同じ。90歳も過ぎれば歯も髪も抜け、物忘れが激しくなる。老いの重荷を、永遠に背負い続けなければならないのである

 ヒントは御伽草子にあったとしても、人間とは何だ、と数世紀後の私たちにも問いかけてくる。物語の底しれぬ力に驚く。