徳島市の新ホール建設事業に関する土地の交換協議を巡り、飯泉嘉門知事は、県が無期限停止とした県市協議の再開の条件として、市が選定した設計・施工の優先交渉権者の白紙撤回を市に突き付けている。

 確かに市は、「県から土地交換の合意が得られるまで事業者の選定には取りかからない」とする市議会の付帯決議に反し、事業者となる優先交渉権者を決めたのだから、撤回するのが筋だろう。

 ただ、県も市の事情を考慮せず、土地を盾に市を追い詰めているようにも見える。互いが歩み寄り、打開策を見いだせないものか。

 今回の問題の原因は、市の議会軽視にある。市は6月議会で「県有地の無償貸与は絶対に間違いない」と主張。県から無償貸与以外の方策を検討するよう要請されても伏せていた。市議会が付帯決議を可決したのはこのためだ。

 にもかかわらず、市はその付帯決議を無視。遠藤彰良市長の「守らなければ罪に問われるというものではない」との発言は、すぐに撤回したとはいえ、本音だろう。議会制民主主義を否定する市のやり方にはあきれるほかない。

 市が市議会への報告や説明を怠っていなければ、こうした事態に陥っていなかった。せめて優先交渉権者を決める前に、市議会に事情説明し、是非を諮っていれば状況は違ったはずだ。

 ただ、市にもくむべき事情はある。事業者の募集を始めたのは7月1日。土地を巡る県市協議が本格化したのは9月に入ってからで、募集締め切りは同25日に迫っていた。「選定しなければ損害賠償請求される可能性があり、やむを得なかった」との市長の言い分も分からないではない。

 知事の「県市協議の無期限停止」の表明を受け、市は、事業を中断し、土地交換協議がまとまるまで優先交渉権者と仮契約しないことを提案している。現実に即した案にも思えるが、県はこれを蹴り、優先交渉権者の撤回を求めている。撤回すれば、改めて事業者を募集することになるが、そこまでする必要が果たしてあるのだろうか。

 知事の言う「県議会の意向」も一部県議の意見で、議会の総意として決議したり、要望書にまとめたりしたものではない。「県有地の利用に関しては交換契約が固まった段階で最終的に判断する」との内容も分かりにくい。土地の協議がまとまるまで、事業者選定を認めないことを含意しているとは、市も読み取れなかったようである。

 県と市が意思疎通を図ってこなかったのも問題だ。優先交渉権者決定前の県市協議で、県は事業者選定の可否には直接触れなかったという。それで市を非難するのはいかがなものか。

 県民にとっては、ホールの土地が県有地だろうと、市有地だろうと関係はない。県民を置き去りにした騒動に早く終止符を打つべきだ。