受験生の不安を置き去りにしたまま、強行してはならない。中止すべきだ。

 2021年1月に始まる大学入学共通テストで、国語と数学に導入が予定されている記述式問題である。

 共通テストは、現行の大学入試センターテストの後継として行われる。目玉だった英語民間検定試験の導入は、経済格差や地域格差への配慮が不十分との批判を受け、見送りが決まった。

 もう一つの目玉が、国語、数学の記述式問題だ。13年度から本格化した大学入試改革の議論で、暗記型ではなく思考力、判断力、表現力を問う重要性が指摘され、取り入れることになった経緯がある。

 だが、これにも専門家らの間から疑問の声が出ている。

 最たるものは、採点ミスが起きやすいことだ。受験生は50万人以上に上り、各大学の2次試験に間に合うよう、膨大な答案を20日以内に採点しなければならない。

 採点者は1万人規模になる見込みで、採点を委託された民間業者はアルバイトも含めるとした。適性試験や面接をし、研修を重ねるというが、採点の質は確保できるのか。採点者によって評価がばらつく懸念や、設問が事前に漏れるとの心配も消えない。

 大学入試センターが昨年実施した試行調査では、採点ミスが国語で0・3%あった。単純計算で受験生1500人に当たる。

 センターは簡潔で採点しやすい設問にする方針だが、それを追求すれば記述式を導入する意義が薄れてしまう。

 受験生の自己採点と実際の成績とのずれが大きくなるのも見過ごせない。試行調査では国語で最大33・4%、数学で14・7%の違いがあった。

 ずれに気付かず合格可能性が低い大学に出願すると、2次試験を受けられなくなる恐れがある。反対に、実際の成績はいいのに自己採点に自信が持てず、志望校を諦めるケースも出てこよう。いずれも受験生にとっては重大な問題である。

 文部科学省は全国の国公立大に対し、二段階選抜で門前払いする判断材料から、国語の記述式の成績を外すよう要請する検討に入った。自ら欠陥を認めたようなものだ。

 今月初めには、東京都内の高校生が共通テストの中止を求める約4万2千人分の署名を文科省に提出した。「受験生の人生を左右しかねないのに、解決の兆しが見えない」との訴えは切実だ。

 文科省は課題を検証し、自己採点とのずれを再度確認する方針も示している。しかし、公平・公正を確保できる有効策を見いだすのは難しいだろう。

 そもそも、50万人分もの記述式の答案を一斉に採点する制度自体に無理がある。

 共通テストでは基礎学力を測り、各大学の2次試験で記述式を充実させる。そうした役割分担を含め、大学入試の在り方についてさらに議論を深める必要がある。