30年余り前に首相を務めた竹下登さんが、たびたび周辺に語っていたそうだ。「もののふ(武士)の進退はある日ある時、突如として決すべきもの」。師と仰ぐ佐藤栄作元首相の遺訓として伝えていたという

 混乱は最小限に、というのを政治家の本分と受け継いだのだろう。そうは言っても、責任の重い立場にある人の引き際というのは難しい

 社会を揺るがす不祥事があった場合、トップが再発防止の陣頭指揮を執ると居座ったなら、バッシングは免れまい。早々の退任であれば決まって、「潔さ」「無責任」の相反する評価を浴びがちだ

 騒動真っただ中での辞任劇を、世間はどう受け止めたか。徳島市の豊井泰雄第2副市長が、市の新ホール建設を巡る混乱の責任を取って身を引いた。飯泉嘉門知事の物言いがつき、事業は止まったままだ。着地点はいまだ見えず、これからが正念場だった

 豊井氏は、飯泉知事の1期目に県秘書課長に登用され、ナンバー3にまで上り詰めた側近中の側近。本県最大の懸案とも皮肉られる県と徳島市の協調実現に向け、期待を背負って副市長に就いたはずである

 県では海野修司副知事が任期途中で辞めたばかり。突如ということでは、公務員版「もののふの進退」と言えなくもないが、ここが引き際だったのだろうか。混乱に拍車をかける異常事態だ。