NHKが本年度中の開始を目指しているテレビ番組のインターネット常時同時配信に対し、総務省が異例の見直し要請を行った。

 認可を受けるために提出した実施基準案で、ネット業務の費用が上限を超える計画になっていたからだ。

 これまで受信料収入の2・5%(本年度予算で約176億円)以内としてきたネット業務の費用が、別枠とした海外向け番組のネット配信などを含めると最大3・8%(約266億円)に拡大している点が問題視された。

 年約7千億円に上る受信料収入を際限なくネット業務につぎ込めば、NHKの業務が肥大化して民業を圧迫しかねない。NHKは、受信料の適切な使い道について再考すべきである。

 総務省は同時配信の条件として、職員の給与水準見直しなどコスト削減努力や、子会社の再編といった合理化策を求めていた。異例の見直し要請は、経営改革の取り組みが不十分ということだ。

 NHKは、こうした指摘を真摯に受け止め、公共放送におけるネット業務の適正な規模について納得のいく回答を示してもらいたい。

 その際、161億円の繰越金があるとされる受信料のさらなる引き下げや、有料配信「NHKオンデマンド」を含めた既存のネット業務の整理に関しても明確な方向性を打ち出す必要がある。

 NHKによるネット同時配信は、受信料契約をした世帯が追加料金なしで放送と同時にネットでも番組を視聴できるサービスだ。これまでのNHKの業務とは一線を画した新たな事業領域である。

 背景にあるのは、スマートフォンなどで動画を楽しむ視聴者が若者を中心に急増し、テレビ離れが進んでいる実態だ。今後も公共放送としての存在感を維持していくには、ネットへの対応が喫緊の課題となっていた。

 来年には高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの導入も控えている。テレビとネットの融合は加速していくだろう。そうした中、国に必要なのは、放送と通信の融合について将来構想をしっかりと描いておくことだ。

 NHKも、視聴者に信頼される「情報の社会的基盤」としての役割を果たせるよう、全力を挙げてほしい。

 言うまでもなく、NHKのネット同時配信を視聴できるのは、受信料契約をしている世帯だけであり、テレビ離れが進む若者層を直接つなぎ留めるものではない。

 NHKの収益基盤は国民から徴収する受信料である。今後、「公共放送」から「公共メディア」に変わっていくのなら、ネットだけでNHKにアクセスする視聴者からも受信料を集める仕組みの構築が欠かせない。

 動画視聴の主役は放送からネットに移行していくとみられる。ならばネット時代にふさわしい受信料制度について検討を急ぐ必要がある。