徳島市出身の漫画家柳本(やなもと)光晴さんが小学館「ビッグコミックスペリオール」で連載していた「響(ひびき)~小説家になる方法~」が10月25日号で完結した。「マンガ大賞2017」大賞を受賞し、人気アイドルグループ欅坂46の平手友梨奈さん主演で映画化もされて大きな話題となった作品。5年余りの長期連載を終えた柳本さんが、現在の心境や作品に込めた思いを語ってくれた。【この記事は全2ページです】

 -5年2カ月に及ぶ連載が終わりました。

 正直言って、大きな感慨のようなものはないです。ピンと来てないというか。既に次回作に向けて具体的に動いているので、原稿作業が数カ月休みになる、くらいの感じで。

 -文芸・文壇という異色のテーマを扱いながら、作品は大きな支持を集めましたね。

 文芸というテーマをエンターテインメントとして成立させるためには、キャラクターが立てばどうにでもなるかな、と思っていました。

 ただ、これは今にして思えば、キャラを立たせることさえできればどんなジャンルも成立するということですよね。極論すれば、テーマが短歌だろうが、喫煙者だろうが、キャラが立っていたらどうにでもなりますね。

 「響」が成功したかどうかは分かりません。面白いと思ってもらえた方に対しては成功したのかもしれないけど、そこまでブレークした訳でもないですから…。

写真を拡大 「響~小説家になる方法~」の最終回が収録された単行本13巻の表紙(ⓒ柳本光晴/小学館)

 -改めて、「響」の物語で描きたかったことは。

 いろいろありますけど、そのうちの大きな一つは、やはり主人公の鮎喰響という女の子を見てほしかった。この子、面白くてかわいいでしょう、と。響をもっと見たいなと思ってもらえた方には成功で、そう思えなかった方には、すいません、僕の力足らずです。

 -響の強い個性は読者の間で賛否両論がありました。

 謎! 本当に、アマゾンレビューとか見たら驚くほどの賛否両論で。僕としては、ただただかわいい女の子を描いているつもりだったので…。

 あえて賛否分かれる作品を描いているつもりは毛頭なく、本当に、変な言い方ですが、普通に面白い漫画を描いているつもりだったので。謎です。

 -響の快進撃の一方で、響を取り巻く人々の葛藤や挫折も丁寧に描かれていました。

 あまり意識してなかったですけど、自分の中で才能を描きたいという思いがあって、それと対照的な存在として才能がなかった人も描きたかったみたいで。

 圧倒的な存在と、それを見上げる人っていうのが両方好きだったということに、作品を描きながら気付きました。

 -「響」の中で特に思い入れが強いキャラクターは。

 全てのキャラにそれぞれ良くも悪くも思い入れがあります。

 好きで言えば、一番はやはり響で、次にテレビ局プロデューサーの津久井。その次が漫画家の鏑木紫(かぶらぎ・ゆかり)と、文部科学大臣の加賀美祥吾ですね。ここらが好きなキャラで、よく動いてくれた。自然体で描けました。

 それ以外の全てのキャラは、もっとちゃんと描けたな、という思いがあります。動きが固かった部分が出てたかなと。例外として、かよちゃん(響の同級生で同じ文芸部の関口花代子)が、僕の想像を超えてくれた。この子は何でもしてくれる。アホはいいですね。

写真を拡大 「響~小説家になる方法~」最終回の一場面(ⓒ柳本光晴/小学館)
■「響~小説家になる方法~」あらすじ
 天才的な文学の才能を持つ女子高生・鮎喰響が、史上初めて芥川賞と直木賞をダブル受賞し、文壇に旋風を巻き起こす物語。何者も恐れない響の破天荒なキャラクターとドラマチックな展開が読者を魅了した。

 -「響」の結末は先生が連載開始当初にイメージしていたものと同じでしたか。

 全く違います。連載開始前、まず1話目冒頭に卒業式のシーンを入れて、その後に入学式から始めようかなという構想があったんですが、やらなくて本当に良かった。

 その時の卒業式の構想は、響が部室で「お世話になりました」って言って、金属バットで自分が使っていたいすや机を破壊するってお話でした。なんか自分が使った物を残したくないのかなという。

 高1の頃の響ならそうしてたけど、3年間たって成長したんですね。少なくとも今の響は、絶対しない。