「斜め45度から見るのが多かったです」と、俳優大杉漣さんは言っていた。サッカーJ2徳島ヴォルティスの熱いファンで知られ、鳴門ポカリスエットスタジアムにも度々足を運んだ。好んだのが斜め45度、すなわち四隅のA自由席からの観戦だった

 ゴール裏に近寄れば応援団との一体感が増し、ピッチ中央に寄れば試合展開がよく分かる。「漣さんはサッカー通だった」と関係者は言う。気さくで飾らない人だから、スタンドで哀歓を共にしたサポーターは数知れない

 ヴォルティスがプロとなった最初の年は、鳴門での初戦と最終戦のために帰省した。国立競技場でJ1昇格を決めた6年前の試合には、ドラマ撮影を切り上げて駆け付けたとの逸話が残る。きょう、あの野太い声をスタンドで聞けないのが悔しい

 ヴォルティスが再び、J1入りのプレーオフ(PO)に臨む。前回POより一つ多い3試合をせり上がらないといけない。試練である

 初戦のヴァンフォーレ甲府とは今季1勝1敗だった。侮れない相手だ。ヴォルティスの青色でスタジアムを埋め、後押ししたい

 大杉さんがサッカーを語る時の決めぜりふがある。「心に届く試合が見たい」。やはり、天上からの観戦では物足りず、お別れの会で贈られた会員証を手に、応援の輪に加わっているかも。もちろん、A自由席で。