年金制度改正は、来年の通常国会の焦点だ。「人生100年時代」に対応した長期戦略を期待するが、与党内部や経済界からの反発を受け、当初の政府方針は撤回や妥協を強いられている。

 後退が顕著なのは、働く高齢者の年金を減額する在職老齢年金制度だ。廃止を視野にした大変革から「現状維持」に戻ってしまった。

 そもそもが単なる思いつきだったのか。結論ありきで前のめりに議論を出発させたのが迷走の原因ではないか。結局は改革の根拠を明確に示せないことが致命傷となった。政府は大いに反省すべきだ。

 少子高齢化に抗して社会保障制度を守る手だてとして、働く意欲がある高齢者は「支える側」に回る。安倍政権の大方針である。64歳までの継続雇用は定着したため、65~70歳の就労拡大が焦点となる。「生涯現役社会」「1億総活躍」などのキャッチフレーズを掲げ、労働力不足解消との一石二鳥を狙っている。

 今年6月、政府は「骨太の方針」で「就労阻害のあらゆる壁を撤廃する」と宣言し、在職年金制度の廃止を掲げた。年金減額の仕組みが高齢者の就労意欲をそぎ、働き止めにつながるとの理由だが、その見立て自体に根拠があったのかどうか疑わしい。

 現行制度では、賃金と年金の合計が月47万円を超えると減額が始まる。65歳以上の減額対象者は2016年度末時点で約36万人にすぎないものの、減額総額は年間約4千億円と年金財政への影響は大きい。廃止・縮小すれば、結果として将来世代の年金水準を押し下げる。

 野党だけでなく与党の公明党からも「高所得者優遇だ」「本当に就労促進の効果があるのか」と異論が噴出。厚生労働省は政府案の修正に応じざるを得なかった。

 10月の厚労省審議会では減額ラインを月47万円から「62万円」に、11月下旬には「51万円」に引き上げる案を提示した。それでも異論に抗しきれなかった。

 老後の暮らしを守るべき年金を、就労の呼び水として扱う手法に無理がある。それでも人生100年時代を乗り切る方策となるなら、国会での論戦を聞きたかった。前段で白旗を掲げた厚労省自体、本音では廃止を望んでいなかったとしか思えない。

 一方、非正規として働く人の厚生年金加入問題は、妥協を強いられる中で一定の前進がみられそうだ。

 加入義務のある企業の要件は現在「従業員501人以上」だが、二段階で「51人以上」に引き下げられる方向となった。政府は「撤廃」も視野に一気の拡大を検討したが、保険料を負担する企業側の反発に配慮したという。

 立場や世代による利害の衝突は、年金制度の宿命だ。それを避けては改革は望めないが、目先の損得は二の次にしないと論議は進まない。子や孫の世代までを見越した視点が最も重要ではないか。