「2+2=4」だが、「5」と言われれば、5と思わなければならない―。思考や言語まで全体主義に支配された社会を、ジョージ・オーウェルは70年前に小説『一九八四年』で描いた

 そこでは、「テレスクリーン」という装置で人々の言動は24時間監視される。疑念を抱いたり抵抗したりすると、拘束されて厳しい尋問や洗脳を受け、感情すらもコントロールされていく

 中国政府のウイグル族への弾圧は、この小説を地で行く。「職業訓練」の名を借りて収容所に放り込み、徹底した思想改造を行う。心のよりどころとするイスラム教を捨てさせ、中国語をしゃべるよう強制する

 収容所に送る人物は、膨大な個人情報をAI(人工知能)で解析し探し出す。国際人権団体によると、生活の隅々まで監視するシステムをつくり、電気やガソリンスタンドの使用歴も把握していたというから背筋が凍る

 中国に張り巡らされた監視カメラは2億台に上ると言われる。これらのカメラを結んだ「天網」と呼ばれるネットワークが、国民の一挙手一投足に目を光らせている。まさに現代版テレスクリーンである

 その名は「天網恢々疎にして漏らさず」から引いたらしい。「天の張る網は広くて一見目が粗いようだが、悪人を逃すことはない」が本来の意味。善人まで捕らえる網ではないはずだが。