消費者庁の消費者行政新未来創造オフィスが昨年7月に徳島県庁に開設されて8カ月が過ぎた。省庁の地方移転の一環で、徳島を消費者行政の実証フィールドとして活用し、各種プロジェクトを進めている。政府は開設3年以内に全庁移転の可否を判断する。初年度を終えるに当たり、岡村和美長官にオフィスの成果や課題、今後の方向性を聞いた。
-徳島オフィスでは若年者の消費者教育や子どもの事故防止、障害者の消費行動調査などさまざまなプロジェクトを展開している。初年度の感想を。
公益通報制度の市町村窓口が昨年11月に県内全24市町村で整備されるなど、予想より早く取り組みが進み、スタートダッシュに成功したという印象。他の省庁や国民に対しても胸を張れる成果が出ている。
-地方拠点の設置は徳島でなければならなかったのか。
そもそも他に手を挙げてくれた自治体がなかった。地産地消の推進など倫理的消費を含めた消費者問題への意識が高い徳島の皆さんや県庁職員、経済界、教育界など、県を挙げて協力してくれるからこそ調査研究がスムーズに行える。
-2022年度から成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が国会に提出されている。消費者行政の課題が増す中、徳島オフィスの2年度目は何に主眼を置くのか。
22年度までに日本の全高校生が消費者教育を受けられるというアクションプランを作っており、徳島の皆さんが先駆けて挑戦してくれている。高齢者の見守りネットワークの構築や倫理的消費の推進など、他のテーマでも日本全体が参考になるような徳島モデルをつくり、それを全国に積極的に発信していく。
-徳島で運営していく上での課題は。
テレビ会議を行ってはいるが、対面で詰めなければならない部分もあり、職員が東京-徳島間を行ったり来たりする際の手間や経費の問題など、組織としての効率化を図っていく必要がある。
-3年以内に政府が全面移転の可否を判断する見込みだが、今後の方向性は。
国会対応や行政処分などの業務は本庁に偏っている。全国の自治体とのやりとりもある中、東京-徳島は近いが、徳島から行くには時間がかかる所もある。そうした現実も踏まえ、何が一番合理的かを考えていかなければならない。ただ、徳島オフィスでのプロジェクトは東京では絶対にできない。国と一緒にやることで「徳島のためになった、徳島モデルが成功した」と言ってもらえるよう今後の期間を大事に使っていきたい。