愛媛県では珍しい医科歯科連携のクリニックを、松山市に開業した。専門の心臓血管外科を中心に、きめ細かな診療を心掛ける。「糖尿病、心筋梗塞と歯周病など、医科と歯科が関連している症例は多い。両科の診療と治療が同じ場所でできるので、患者の負担も抑えられる」とメリットを語る。

 医科と歯科の両方を受診する患者は月約100人。「医科で処方した血圧薬の副作用で患者が歯肉炎になっていると、歯科から指摘されたこともある。重症の糖尿病患者に歯周病の治療をするとインスリンの投与量が半減した」。数多くの症例と向き合い、病気の早期発見や有効治療に生かしている。

 美馬市で開業医をしていた父の影響で医療の道に進んだ。脳外科を目指したものの、大学で心臓手術を見てのめり込んだ。「動いている心臓を人間の手で止め、治療してまた動かす。すごいと思った」。卒業後も大規模病院などで、専門技術を生かした心臓手術を続けた。

 ただ「なぜ患者は手術をしなければいけない状態になったのか」と常に感じていたという。「10年前に血圧をコントロールしていれば心筋梗塞の手術は不要だったかもしれない。糖尿病を早く治療していれば手術には至らなかったかもしれない」。病気の根本を考えた治療を施し、10年後に手術をする人を減らしたいとの思いから、開業医の道を選んだ。

 徳島の医療について「心臓手術ができる病院の多くが徳島市とその周辺にしかない。一極集中が進んでいる」と気に掛ける。

 開業後は古里に帰る機会が減った。それでも、同級生の医師仲間とは今でも連絡を取っている。「互いに刺激し合って、地域医療に貢献したい」と力を込めた。

 さとう・はるみつ 美馬市美馬町出身。旧郡里中、城南高から大阪医科大卒。大阪医科大胸部外科学教室、大学院を経て医学博士を取得。世界初の胃大網動脈を使った心臓バイパス手術の開発に携わった。1991年から愛媛県立中央病院心臓血管外科勤務。2014年、歯科医師の長男哲大さん(35)と松山市内でノエルクリニック心臓血管外科歯科を開業。66歳。