北朝鮮が先月28日、日本海に向けて弾道ミサイルとみられる短距離の飛翔体2発を発射した。弾道ミサイルの発射は国連安全保障理事会の決議に違反しており、日本のみならず国際社会への挑戦でもある。断じて容認できない。

 北朝鮮の非核化を巡る米朝交渉は足踏み状態が続いている。北朝鮮は交渉期限を年末までと定めていることから今後、軍事挑発を強める恐れがある。現に、30日には日本に対しミサイル発射を警告する談話も発表した。

 憂慮すべき状況だ。政府は米韓両国と連携を図り、安全確保へ万全を期すとともに、他の国々にも経済面での包囲網強化を働き掛けることが必要だろう。

 北朝鮮は5月以降、短距離弾道ミサイルなどを相次いで発射している。今回で13回目、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持が決まってからは初めてだ。

 米朝交渉で、北朝鮮は米国に敵視政策の撤回や米韓合同軍事演習の中止などを強く要求。今回の発射は交渉に向けて米側を揺さぶり、対応を迫る狙いのほか、日米韓3カ国の連携状態を探る意図もあるとみられる。

 懸念されるのは、米国との交渉が行き詰まっている間にも、着実にミサイルの技術力をアップさせていることだ。

 今回発射された2発の間隔は約30秒で、10月31日に発射した時は3分間隔だったという。河野太郎防衛相は「(複数のミサイルを同時に撃ち込む)飽和攻撃などに必要な連続発射技術の向上を図ったもの」と分析する。

 危機感をあおる北朝鮮の暴走を食い止められるのは米国と中国しかない。ただ、これまで米朝対話を後押ししてきた中国の対応は不透明さを増してきた。

 米国で、香港の人権や自治、民主主義を支援する「香港人権・民主主義法」が成立したことに中国が強く反発、報復措置を発表するなど、対立激化が必至の状況だ。

 貿易交渉が暗礁に乗り上げれば、米国の譲歩を引き出すため、中国が米朝交渉への協力姿勢を転換するとの見方も出ている。そうなれば、米朝協議の進展はますます困難になろう。

 10月の米朝実務協議が不調に終わって以降、北朝鮮の態度は強硬になっている。

 米国は先月中旬に予定していた米韓両空軍の合同訓練の延期を決め、協議の再開を呼び掛けた。しかし、北朝鮮は対応が不十分だとして再開に応じていない。

 米朝間の駆け引きが続く中、仲介役としての韓国の存在感も薄れる一方だ。北朝鮮は既に「これ以上話すことはない」と韓国政府を突き放しており、今後もミサイル発射などで圧力をかけることが予想される。

 北朝鮮の強硬姿勢の一因として、日米韓の安全保障を巡るずれも指摘される。いつまでもぎくしゃくしていては、付け入る隙を与えるだけだ。