耐震改修して存続する方針が示された鳴門市文化会館=同市撫養町

 鳴門市は3日、耐震性不足のため存廃を検討していた市文化会館(撫養町)について、耐震改修して存続させる方針を市議会に示した。施設に大きな劣化は見られず、新築するより費用を抑えられると判断した。会館は建築家の故増田友也氏の遺作として建築的評価が高い。2021年4月から休館して本格的な調査に入るため、県内では1500席規模のホールの空白期間が生じる。

 廣瀬高市民環境部長が東谷伸治氏(潮)の代表質問に答えた。

 市は5月に内部組織の「あり方検討会議」を設置。「震度6強以上の地震で倒壊する可能性が高い」とされた14年の診断結果や、当時の耐震設計で15億円に上った概算工事費などを基に、耐震改修するか、建て替えるかを議論してきた。

 その結果▽会館は柱や壁など構造体の劣化が少なくホールとしての機能を保っている▽新築と比べて当面の財政負担が少ない―などから耐震化が望ましいと判断した。旧建設省の「公共建築百選」に選ばれるなど、建築物として評価されている点も考慮した。

 市は事業費を算出していない。音響や建築美を損なわずに補強できるかどうかが課題だ。空調や音響、照明などの設備も修繕が必要で、費用がかさむ恐れがある。

 市は来年3月末までに整備スケジュールや調査費などを詰める。完成時期は、23年度中の徳島市の新ホール(1500席)の開館より後になる見込み。

 文化会館は鉄筋コンクリート延べ7525平方メートルで1982年に完成。こけら落としにはベートーベン「第九」交響曲演奏会が催され、「鳴門第九の殿堂」として親しまれている。98年の神戸淡路鳴門自動車道の全通記念事業では小澤征爾さん指揮の第九演奏会が開かれた。2018年度の利用者数は13万9609人。

県内大ホールが一時消滅 文化衰退を懸念する声

 鳴門市文化会館の休館に伴い、1500席規模のホールが県内から一時なくなることを受け、文化団体からは「徳島の文化が衰退してしまう」と懸念する声が上がった。

 鳴門市の認定NPO法人鳴門「第九」を歌う会は毎年6月、市文化会館でベートーベン「第九」交響曲演奏会を開いている。亀井俊明副理事長(76)は「国内外から600人の合唱団が集まる。ステージの広いホールは他になく困った。第九の灯を消すわけにはいかない」と頭を痛める。

 県吹奏楽連盟の松浦孝憲理事長(62)は「客席が少ないホールでは音量が大き過ぎて十分な審査ができない」と困り顔。徳島市の新ホールを巡る県市の土地交換協議が中断していることについて「県市とも住民ファーストで考えていない。早く新ホールを整備して、空白期間を少しでも短くしてほしい」と訴えた。

 徳島市の住民団体「県都にふさわしいホールの実現を求める会」の小路常芳会長(68)は「県内全体で1500席規模のホールがなくなるのは、徳島の文化衰退につながりかねない」と憂慮した。

 増田建築 京都大名誉教授の増田友也氏(1914~81年)が設計した建築物。鳴門市には島田小や瀬戸小など19棟があり、市役所本庁舎と市民会館、文化会館、旧勤労青少年ホーム、旧老人福祉センターの5棟は、近代建築の記録・保存を行う国際学術組織DOCOMOMO(ドコモモ)日本支部の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれている。市は新庁舎整備に伴い、本庁舎と市民会館、共済会館の3棟の増田建築を取り壊す。