徳島県議会11月定例会の代表質問の答弁で、飯泉嘉門知事は、徳島市の新ホール事業を白紙に戻すべきだとの考えを示した。

 ホール建設予定地の市文化センター跡地の3分の1を占める県有地を巡って、知事が、県市の土地交換協議の無期限停止を表明し、事業は止まっている。土地利用に慎重な判断を求める県議会の意見や、県との合意を事業者選定の条件とする市議会の付帯決議に市が反し、設計・施工の優先交渉権者を発表したためだ。

 知事は、協議再開の条件として、優先交渉権者の撤回を市に求めているが、今回、さらに踏み込んだ選択肢を提示したといえる。

 徳島駅前のアミコビルからそごう徳島店が撤退するのを踏まえ、知事は「スタート地点に戻り、あらゆる選択肢を排除することなく考えるべきだ」と述べた。事業をリセットし、そごう撤退を機に中心市街地活性化の観点も加えて、ホールの在り方を一から見直そうとの考えである。

 遠藤彰良市長は、ホール整備を含む新町西再開発事業を中止し、徳島駅西側駐車場でのホール建設を目指したが、事業費が高くつくため、一転して文化センター跡地に決めた。議論を十分しないまま進めてきたことは、拙速とのそしりを免れない。白紙化は一つの方策ではあろう。

 ただ、ホール整備の議論が始まってから四半世紀以上がたち、ようやく建設のめどが立ったいま、振り出しに戻すことには異論も多いはずだ。

 またも立地場所の選定から始めるとなると、相当の年月を要する。2014年度末の文化センターの閉館で活動の場を失い、ホール完成を待ち望む文化関係者らは受け入れることができるだろうか。

 代表質問では、県議会自民党と新風とくしまがこの問題を取り上げた。だが、混乱の原因や経緯、今後の方針について説明を求めたにとどまり、知事の主張を聞くだけに終わった感が強い。

 県市協議は昨年10月に始まり、今年6月、県都市計画課は徳島新聞の取材に対し「協議は順調に進んでいる。市との関係は全く問題ない」と答えている。にもかかわらず、なぜこのような事態に陥ったのか不可解だ。

 無償貸与の確約はあったのかなかったのか、優先交渉権者を決めることを県は了解していたのかどうか。重要な点で、県と市に見解の相違があるのは、意思疎通が図れていなかった証左だ。それは市だけの責任ではなかろう。

 肝心なのは、県民にとって有益な落としどころを見いだすことである。それこそ政治家の県議の務めだが、「責任は市にある」と言うだけで、建設的な提案がなかったのは残念だ。

 そごう撤退後の中心市街地の活性化についても提言はなく、議論は深まらなかった。

 議員には、県民の声に耳を傾け、県民益に資する解決策を探ってもらいたい。