パワハラの定義や防止対策の具体的な内容を盛り込んだ指針がまとまった。

 企業にパワハラ防止策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が5月に成立したのを受け、厚生労働省の労働政策審議会が議論していた。

 意見公募を経て年内をめどに正式決定する予定で、大企業は来年6月、中小企業には2022年4月から規制法が適用される。

 パワハラを規制する法律と指針が整うのは初めてで、一歩前進と言えるだろう。

 だが、パワハラの判断基準に不明確な点があるなど、被害を防ぐ実効性には疑問符が付く。企業の恣意的な解釈を許さず、責任逃れに使われないよう、働く人の視点に立って見直していく必要がある。

 規制法ができたのは、被害が絶えないからだ。全国の労働局に寄せられたパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談は18年度、過去最多の約8万2千件に上った。

 指針は、パワハラを「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、就業環境を害する」と定義。身体的、精神的な攻撃や過大な要求など六つの類型があるとした。

 その上で企業の義務として、パワハラを行ってはならないと就業規則などに明記するほか、相談を理由に不利益な取り扱いをしないことなどを求めている。

 問題は、パワハラではない行為としたケースの記述に曖昧な表現があることだ。

 例えば「遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない人に一定程度強く注意」するのは該当しないとしたが、社会的ルールの判断には幅があり、「一定程度」とはどれほどなのか不明だ。

 被害者らが訴えるように、企業が「業務上の指導」と弁解できる余地を残さない表現に変えるべきである。

 フリーランスや就職活動中の学生が受けるハラスメントに対する具体策が乏しいのも、見過ごせない。

 指針は「(社員と)同様の方針を示し」「適切な対応に努めることが望ましい」との表現にとどまった。

 フリーランスで働く人では、6割以上がパワハラを受けた経験があるとの調査結果が出ている。就活中のパワハラ、セクハラ被害も深刻だ。

 国会は規制法の審議で、これらの被害にも対応するよう付帯決議をしている。それを尊重し、保護対象を広げるべきだ。

 国際的に見ると、日本の対応は大きく遅れている。国際労働機関(ILO)は6月、職場でのハラスメントを全面的に禁止する条約を採択した。日本は賛成したものの、批准には慎重な姿勢だ。

 パワハラは心身の不調や退職、さらには自殺につながる許されない行為である。批准に向け、一層の法整備を急ぐとともに、企業も旧態依然の職場環境を改める取り組みを進めなければならない。