腹心に裏切られたり反逆されたりすれば、激怒するものだが、この人の対応は違った。次期首相と目された竹下登が勉強会と称して創政会を旗揚げし、田中角栄にあいさつに赴く。田中派を割る事実上のクーデター。追い返されても仕方ないが、田中は愛想よく「いいんだ。同心円でいこう」と受け入れた

 対立を先鋭化させず、一つの円の中に全てを包み込もうという田中の政治観がそこに表れていると、新川敏光・法政大教授は著書で指摘する。「包摂」の精神こそが田中政治の本質だ、と

 今の政治は異論や反論を寄せ付けない傾向が強い。「排除」の論理が幅を利かす風潮への嫌悪、不満が、息の長い角栄人気を支えているのかもしれない

 「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたラグビーW杯日本代表のスローガン「ONE TEAM」。ここに「包摂」の精神が息づいていないだろうか

 不寛容という言葉が象徴するように、何かにつけて言い争い、いがみ合う時代。協調、協力、一丸への渇望が、ラグビー人気急上昇の背景にあったに違いない

 徳島市の新ホール事業では、県と市の不協調が際立つ。県有地の無償貸与を確約したしないで主張が対立するなど、関係がこじれている。県民置き去りのごたごたはうんざり。そろそろ「ONE TEAM」になってもいいのでは。