刑法改正後に県内で摘発された性的虐待事件

 「お父さんが警察に捕まってしまう。恥ずかしいし、死ぬまで黙っていなさい」。5歳の頃から実父に性的虐待を受けていた高松市の美容師宮本ゆかりさん(49)が母に被害を打ち明けると、こう言われた。友人や学校の先生にも明かせず、「死にたい」と思った。大人になって重いうつ病に悩まされた。

 長期間にわたって被害者に深刻な影響を与える性的虐待は、最も表面化しにくい性暴力といわれる。「全国よりそいホットライン」の遠藤智子事務局長は「家族関係の中で、被害を口にできない状況に追いやられている場合が多い」と話す。

 宮本さんも長らく沈黙し、約1年前に実名で被害を公表した。

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 内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(2018年版)によると、「無理やり性交された被害経験がある」と答えた女性の加害者は4・9%が親(義理の親、親の交際相手を含む)で、きょうだい(義理を含む)は5・7%。18歳未満の子どもの加害者は20%近くが父親などの「監護者」だった。

 大阪府の民間病院に開設している性暴力救援センター「大阪SACHICO」で10年4月~19年3月に初診を受けた計2130人のうち、約4分の1の518人は性的虐待の被害者だった。

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 家庭内での性暴力は少なからず起きている。17年の刑法改正では、主に性的虐待を想定した「監護者性交」と「監護者わいせつ」の両罪を新設し、徳島県内でも2事件が摘発された=表参照。

 10代の実子2人にわいせつ行為をした県内の男性は、昨年10月の公判で「他の男にされたら逃げろと教えるために仕方なくしていた」などと弁明。約4年間にわたって義理の娘に加害した男性も、同時期に開かれた裁判で「酒を飲むと気が大きくなり、ついやってしまった」。身勝手で罪悪感に乏しい意識が明らかになった。

 虐待被害者らの相談に応じる県内の女性支援団体「エンゼルランプ」の福本尚子さんは「子どもを人格のある存在とみなさず、自分のものだからどう取り扱ってもいいと考える。性虐待の本質は支配欲だ」と語る。「モノ」のように扱われた被害者の傷は深く、癒やすには時間がかかると指摘し、「子どもは加害者に従わざるを得ない。自分を責めずケアを受けてほしい」と求めた。

 監護者わいせつ・監護者性交罪 18歳未満の子どもに対して、親や養親、養護施設の職員など監護する立場の者が、その影響力に乗じてわいせつ行為や性交をした場合、暴行や脅迫がなくても罰することができる。17年の刑法改正で新設された。非親告罪で、被害者の告訴がなくても起訴できる。

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