12月8日にあったJ1参入プレーオフ2回戦で、徳島ヴォルティスはモンテディオ山形に勝利し、6年ぶりのJ1復帰へあと1勝になった。県民の関心は高まっており、山形戦の観客は1万人を超えた。地域密着を目指し、地域との関わりを重要視するJリーグ。チームの存在は地域や住民に大きな力を与えているようだ。その神髄は、アウェーサポーターを通してこそ、感じることができる。

応援するモンテディオ山形のサポーター=鳴門ポカリスエットスタジアム

 プレーオフ2回戦が行われた鳴門ポカリスエットスタジアムは、徳島サポーターで埋め尽くされた。アウェーチームのサポーターが陣取る「ビジター自由席」は、南側のゴール裏の一部に設けられている。サポーター数が絶対的に多いJ1チームに比べて、J2チームでアウェーの試合にまで訪れる人は多くない。この日は大勢の山形サポーターが詰め掛けた。

 スタジアム近くでは山形ナンバーの観光バスが4台並んでいた。地元の旅行会社2社が企画した応援ツアーだ。前日の7日夜に出発し、日本海沿いを10時間以上かけてたどり着いた。もちろん他の交通手段でも多くの人が駆け付けた。

山形から徳島に訪れた観光バス=鳴門ポカリスエットスタジアム

 

 山形にとっては、2015年以来のJ1入りがかかる試合。サポーターは懸命にチャント(応援歌)を歌い続け、声を張り上げた。アウェーサポーターの応援があるからこそ、ホームサポーターの応援にも力が入る。スタジアムの雰囲気を盛り上げるためには欠かせない存在だ。

 試合終了後、山形サポーターの人たちに話を聞いた。「まだ気持ちの整理がつきません」と言いながら応じてくれた男性(44)は前日夜9時に車で出発し、徳島にやってきた。山形県鶴岡市在住で、市出身者が山形に入ったことがきっかけで応援するようになり、「はまった」と言う。アウェーにもできる限り出向き、「鹿児島まで車で行きましたよ」。突き動かしている理由は明快だった。「地元の誇りですから」。続けて「応援を通じていろんな人と出会い、友だちになった。それも楽しいですね」と話した。復路も車で帰る。「明日8時から仕事です」と言い、スタジアムを後にした。

 山形県以外から訪れた人もいる。埼玉県在住の男性(32)は、山形県東根市出身。関東圏で行われる試合は観戦しているが、徳島は初めて。「大一番ですから」と乗り込んだ。成田空港から格安航空会社で高松空港に到着し、レンタカーで移動した。古里を離れても、古里への思いは変わらない。

 私も何度か徳島ヴォルティスのアウェー試合を観戦したことがある。ホームのサポーターに圧倒されそうになるが、少数だからこそ応援しがいがある。選手たちと共に戦っている思いも増す。その土地に住む徳島出身者が訪れ、アウェーの応援席は「古里」になる。他のチームも同様だろう。「郷土愛」は、ホームでの一体感もさることながら、アウェーでこそ沸き立つのかもしれない。

 昨年、宇都宮市であった徳島ヴォルティス対栃木SCの試合で、アウェーサポーターだった徳島の観客を取材し、多様さに驚いた。

栃木でのアウェー戦に駆け付けた徳島ヴォルティスのサポーター=2018年4月、宇都宮市の栃木グリーンスタジアム

 

 全国各地を転勤している会社員は徳島に赴任した際、J1を目指す県民の一体感に引き付けられ、ヴォルティスのファンになったと言う。本人は北九州市出身。徳島を離れた後も応援し続けている。

 東京生まれ東京育ちの男性は、父が徳島県出身。小さい頃からよく徳島を訪れており、「自分にとっても古里のようなものですから」と言った。

 アウェーサポーターに思い入れが強いためか、私はホームで観戦する時も、「ビジター自由席」に最も近い場所に座っている。遠くから、わざわざ徳島まで訪れたサポーターたちの熱気を感じるためだ。

 徳島まで来てくれたことへの感謝の思いもある。試合前、ポカリスエットスタジアムでは、スタジアムDJが、アウェーチームのサポーターを紹介して「ようこそ徳島へ」と歓迎すると、ホームのサポーターなどから大きな拍手が湧く。この瞬間が、何とも好きだ。

 いよいよJ1を懸けた戦いは、残り1試合となった。14日に行われる湘南ベルマーレ戦の会場は湘南のホームである神奈川県平塚市のShonanBMWスタジアムであり、徳島ヴォルティスはアウェーになる。

 スタジアムは、湘南サポーター一色になるだろう。ただ、アウェーサポーター席にも、いつも以上に徳島からや関東圏の出身者らが駆け付けるに違いない。♬立ち向かえ戦士たち 俺たちの望むもの 徳島のゴールだけ 徳島の勝利だけ♪ チャントが響き、旗が揺れる姿が目に浮かぶ。数では湘南に負けても、そこには「徳島への思いと誇り」が凝縮されている。(卓)