トイレが撤去され、赤土が敷かれた板東俘虜収容所跡地=鳴門市大麻町

 鳴門市大麻町の板東俘虜(ふりょ)収容所跡地内のトイレが今年1月に老朽化のため撤去され、観光客らが不便を強いられている。収容所跡の国史跡指定を目指している市は、新たな構造物は史跡化に支障を及ぼす可能性があるとして新設しないことにしている。ただ、ベートーベン「第九」交響曲のアジア初演100周年を来年に控えて観光客の増加も予想され、市は対処法を検討している。

 跡地の東側にあったトイレは、鉄筋コンクリート製で広さが26平方メートルだった。築40年以上が経過していたとみられ、浄化槽に雨水が流入し始めたため、衛生管理の面から市が174万円をかけて撤去した。

 市は「第九」アジア初演100周年に当たる2018年度までに収容所跡の国史跡指定を文部科学省に申請する方針。指定には、当時に近い状態が望ましいとされ、トイレの建て替えも文化財行政を所管する文化庁から「指定に影響が出る可能性がある」との助言があった。このため市は、新設しないことにしている。

 近くの公共トイレは道の駅・第九の里にあるが、跡地から徒歩で5分以上はかかる。長年、収容所跡の草刈りや木のせん定を市から請け負う和田幸夫さん(78)=同町桧=によると、トイレの撤去後、観光客らが近くの県営大麻団地に駆け込んで貸してもらうようお願いしたり、跡地内の休憩所で野宿するお遍路が付近で用を足したりするケースが相次いでいるという。

 和田さんは「来年の100周年に向けて観光客の増加が見込まれる中で、跡地の衛生環境を悪化させないためにもトイレは必要だ」と訴える。4月8、9日の収容所開所100周年イベントでは、市は簡易トイレを設けて対処した。

 市経済建設部は「状況は理解しており、どんな方法があるか検討したい」と話している。