徳島が誇る伝統工芸品「遊山箱」の魅力を発信しようと、愛用者らでつくる「遊山箱文化保存協会」が発足した。貸し出した遊山箱を実際に使ってもらったり、腕利きの職人が手掛ける意匠に凝った新作情報を発信したりして、ブランド力向上につなげたい考え。活動の第1弾として、遊山箱に入れた菓子を屋形船で味わう船上イベントを7日に開く。
食卓を演出するテーブルコーディネーター島内陽子さん(50)=徳島市南昭和町1=が、自身の教室の教え子や遊山箱を取り扱う同市内の漆器店店主らに呼び掛け、昨年12月に立ち上げた。
テーブルコーディネート教室で遊山箱を活用している島内さんは母親から、「桃の節句」の時季にごちそうなどを詰めて野遊びしていたことをよく聞かされたという。遊山箱に親しむ機会が少なくなる中、徳島が誇る伝統工芸の良さを幅広い世代に知ってもらい、認知度を再び高めようと会の結成を思い立った。
会員が所有する遊山箱を福祉施設や学校などに有償で貸し出し、お年寄りや子どもたちに親しんでもらう。また旅行業者らには、県産食材を使った料理や菓子を遊山箱に入れて、観光客に提供してもらうといった取り組みを提案する。
2月に開設した会のホームページ(HP)には今後、県内で遊山箱の新作を製造販売している木工業者や、遊山箱の展示イベントなどの情報を掲載する。
7日のイベントは午前10時から午後3時まで行い、屋形船に乗って同市の新町川や助任川を巡って花見をしながら、遊山箱に入れた阿波ういろうを味わう。既に定員(60人)は埋まっており、船が発着する新町川水際公園で遊山箱を展示販売する。
島内さんは「伝統工芸品は手に取ってもらって、初めて次世代に伝わる。新たな遊山箱の使い方も提案していきたい」と話しており、活動する会員を募っている。問い合わせは島内さん<電088(625)3099>。
≪遊山箱≫ 桃の節句の前後、徳島の子どもたちが野山に遊ぶ際に利用した三段重ねの重箱。昭和40年代には廃れたが、10年ほど前から徳島ならではのユニークな地域資源として再び脚光を浴び、徳島市立木工会館や阿波おどり会館1階の物産店・あるでよ徳島などで販売されている。