寂聴文学の魅力について語り合うパネリストら=早稲田大小野記念講堂

 徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(97)の文学を再評価しようと「寂聴サミット」が9日、都内の早稲田大小野記念講堂で開かれ、学生やファンら約200人が詰め掛けた。登壇した作家ら4人が出会いのエピソードや代表作などについて討論。寂聴さんは動画でメッセージを寄せ「悪口も言われたが、どんな目に遭っても、この道を通そうと思ってやってきた」と作家人生を振り返った。

 作家の高橋源一郎さんと平野啓一郎さん、詩人の伊藤比呂美さんがパネリストとして参加。文芸評論家の尾崎真理子さんが司会を務めた。

 サミットの開催を呼び掛けた伊藤さんは、きっかけについて「大庭みな子、石牟礼道子、津島佑子ら一時代を築いた女流作家の作品が国内でなかなか手に入らない状況を残念に思ったからだ」と説明した。その上で女流作家の代表格である寂聴さんの作品を今一度見つめ直す必要性があると強調した。

 寂聴さんを敬愛する高橋さんは、1981年のデビュー前、自信満々で群像新人賞に出した作品が落選した際のエピソードを紹介。「ただ落ちただけならいいが、選考委員の多くが酷評した。その中で寂聴さんだけが推してくれ、励ましてくれた。それがデビューにつながった。僕にとって文学界のお母さんだ」としみじみと語った。

 代表作の一つで、無政府主義者の大杉栄や妻の伊藤野枝らを中心に大正期の群像を描いた伝記小説「美は乱調にあり」にも話が及んだ。

 平野さんは「個人を翻弄する恋愛という内的な要素と、社会性という外的な要素が絶妙に主題化された作品」と指摘。近代の女性の自立をテーマにした一連の評伝ものを「寂聴さんならではのコミュニケーション能力を発揮し、関係者からいい話をいっぱい引き出して書いており、文学史的に非常に価値がある。寂聴文学の中でも優れている」と評価した。

 ポルノと酷評され文壇から冷遇されるきっかけになった「花芯」や、古里徳島も登場する自伝小説「場所」についても意見が交わされた。また、反戦を訴えるハンガーストライキといった政治参加なども話題となり、パネリストたちは独自の視点を示した。

 最後に大きなスクリーンに動画で登場した寂聴さんは「自分の書いたものが後に残るとは考えていない。どんどん世の中は進み、文学も変わっていく。ただ、生きている間、自分が信じたことを通せたのは幸せだ」と締めくくった。