瀬戸内寂聴著「はい、さようなら。」

 瀬戸内寂聴さんが京都・寂庵で開いている法話の会は、参加申し込みが殺到する人気行事だ。「はい、さようなら。」は、2009年から今年夏まで週刊「女性自身」に掲載された法話のうち、寂聴さんが選んだ8回分を中心に収録した。

 長生きと元気の秘けつを「毎日たくさん笑うこと」と言う寂聴さんの法話はユーモアにあふれ、悩む人たちに、生きる希望と勇気を与えてくれる。

 09年春の法話で、86歳の寂聴さんは、ケータイ小説「あしたの虹」の単行本化に触れ、何か新しいことをする時には「これは必ず成功する」と思うプラス思考の大切さを訴えている。

 この年の秋には「この世は生々流転、悲しみはいつまでも続かない」と話し、「夫が浮気していても、そんなのいつまでも続かない。もうすぐ男としてダメになりますから、心配ない」と、会場を爆笑の渦に引き込んだ。

 また、徳島市で過ごした少女時代、家で作ったお遍路さんへのお接待袋を運んだ経験も振り返り「いちばんいいお接待袋をくれるのは私の故郷の徳島だって、言われている」と古里自慢で会場を沸かせている。

 17年夏、95歳の寂聴さんは「この世に生きている限り、嫌なこと、自分だけが何でこんなに不幸な目にあうんだと思うようなことが必ずある」と語り「不幸な境遇を立て直すのは、自分の心です」と説いている。

 95歳で初句集「ひとり」を出版した寂聴さんは、病床で句集を出そうと思いつき、「パーッと心が明るくなった」と語る。<紅葉燃ゆ 旅立つ朝の 空や寂>は1973年11月の得度の日に、岩手県中尊寺の廊下で突然、浮かんだ句。<子を捨てし われに母の日 喪のごとく>は、幼い娘を残して家を出た寂聴さんの「人生そのものをよみ込んでいる」と言う。

 97歳で迎えた今夏の法話では「毎日最低1回は相手を褒めてあげる。それが家族円満の秘けつであり、お互いが美しくなる秘けつでもある」と語り「生きることは愛すること。愛することは許すこと」と強調している。

 寂聴さんの言葉は、家族を亡くすなどして苦しみ悲しむ人の心を癒やし、優しく抱擁しているようだ。

 書家の榊莫山さんや俳優の萩原健一さんら交流のあった人たちの思い出話も、それぞれの生きざまを浮き彫りにして、味わい深い。

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 「はい、さようなら。」は光文社刊。1430円。