4月の統一地方選、7月の参院選で全国的に女性議員は伸び悩んだ。選択的夫婦別姓の導入に向けた議論も進展を見せないまま。「これからは女性の時代」と言われ続けた平成が幕を閉じ、令和が始まった2019年が、女性にとってどんな年だったかを振り返る。

東大入学式の祝辞が話題になった上野千鶴子さん=6月、東京都内

 「社会に出れば性差別が横行しています。東京大もその一つ」―。元号が変わる直前の4月、女性学のパイオニアである社会学者上野千鶴子さんが東京大の入学式の祝辞で男女格差に触れ、話題を呼んだ。

 平成が始まったのは1989年。幕開けは新時代の到来を感じさせるものだった。元年の参院選では、土井たか子委員長率いる社会党が「マドンナブーム」を巻き起こした。徳島選挙区では乾晴美さんが当選。流行語大賞には「セクシュアルハラスメント」が選ばれている。

 それから30年後の上野さんの祝辞は、平成の間に女性を巡る状況がそう好転していないことを物語る。

◇  ◇  ◇

 12月10日、フィンランドでは34歳の女性首相が誕生した。一方、日本では政治と女性の距離は開いたままだ。

 男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に求める「政治分野の男女共同参画推進法」が2018年に成立。施行されて初めてとなった19年4月の統一地方選で、徳島県議会の女性当選者は改選前と同じ4人で11%。選挙があった7市町村では4人増の14人で全体の14%にすぎなかった。

 ただ、女性の上位当選が目立ったことは希望を抱かせた。10月の県議補選吉野川選挙区(欠員2)、11月の阿南市議補選(欠員3)でも女性がトップ当選している。

 7月にあった参院選の女性当選者は、全国で28人で過去最多だった16年に並んだ。当選者における割合は22・6%。「徳島・高知」選挙区からの立候補者4人はすべて男性だった。

◇  ◇  ◇

 その参院選で、野党が争点の一つに挙げたのが、「選択的夫婦別姓」だった。

 参院選公示前日、日本記者クラブが主催した党首討論会で、質問者が「選択的夫婦別姓に賛成なら挙手を」と呼び掛けた。手を挙げたのは、安倍晋三首相(自民党総裁)以外の6人。自民党の後ろ向きな姿勢があらわになった。

 先立つ3月には、別姓を認めない戸籍法は憲法違反とし、国に損害賠償を求めたソフトウエア会社サイボウズの青野慶久社長らによる訴訟が東京地裁に棄却されている。

 青野社長は結婚の際、戸籍名を妻の姓に変え、普段は旧姓を名乗っているものの、数々の不利益があると訴えていた。

 選択的夫婦別姓の導入を求める動きは、平成元年に、東京弁護士会が「選択的夫婦別氏制採用に関する意見書」を公表して広がった。課題は令和に持ち越されている。

◇  ◇  ◇

性暴力の撲滅を訴える「フラワーデモ」で発言者の話に聞き入る参加者=11月、東京駅前

 性暴力を告発する#Metoo運動は引き続き、広がりを見せた。父親による実の娘への性的虐待を無罪とした名古屋地裁岡崎支部の判決が出たことなどを受け、4月以降、徳島を含む全国で「フラワーデモ」が展開された。

 Twitterでは、職場でのパンプス着用強制に反対するキャンペーン「#Kutoo」をグラビア女優・ライターの石川優実さん=東京都=が始めた。インターネットメディアが女性のみメガネ着用禁止の職場があると報じ、海外メディアからも注目された。

◇  ◇  ◇

 日韓関係が悪化する中、両国の女性はフェミニズムを通じ連帯した。

 あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」が一時展示中止となった発端は、元慰安婦を象徴した「平和の少女像」を巡る混乱だった。「反日的」などという歴史認識をベースにした批判に対し、「女性・戦争・人権」学会などは、「戦時性暴力と人権」をテーマにした作品であるとし、展示中止への抗議を表明した。

 韓国の女性が日常で経験する抑圧を淡々と描き出し、同国で社会現象を巻き起こした小説「82年生まれ、キム・ジヨン」(チョ・ナムジュ著)の邦訳が日本でもヒット。「韓国・フェミニズム・日本」をテーマに特集した季刊文芸誌「文藝 秋季号」(河出書房新社)は出版不況の中、異例の増刷となっている。

12年ぶり県議復帰 吉田益子さんに聞く

よしだ・ますこ 1959年生まれ。吉野川第十堰(ぜき)の可動堰化計画を問う住民投票などに携わる。2003年の山川町長選に出馬し、現職に敗れる。同年の県議選で当選し、07年の県議選は落選した。09年衆院選の比例代表四国ブロック、10年参院選の徳島選挙区に、いずれも民主党公認で立候補して落選した。薬剤師。医療法人さくら診療所理事、宿泊施設・美郷の湯支配人。

 今年も大幅な増加が見られなかった女性議員。そんな中、10月の徳島県議補選吉野川選挙区(欠員2)でトップ当選した吉田益子さん(60)は、12年ぶりの県議復帰となる。立候補の経緯や選挙戦の感想を聞いた。
 
 ―昨年の取材時には、「もう選挙には出ない」と話していました。夏の参院選で立候補の要請をされ、断ったとも聞いています。心境の変化があったのでしょうか。

 「出ない」と思っていたのは「(落選が続き)選挙で自分は勝てない」と考えていたから。出身は宮崎県で、こちらに同級生もいない。それで諦めていた部分もあるんですね。

 9月30日に、女性議員を増やす活動を長年続ける諏訪公子さん(市民団体「市民と政治ネットワーク徳島」代表)のほか、3人の県内の女性議員と話をしました。事前に「出ませんよ」というメールを何度かやりとりしていましたが、話をするうちに、「地方議会を変えていかないと」という気持ちは同じだと思った。「前向きに考えます」と答え、本当に前向きに考えました。

 ―前回出馬した県議選の得票を約2千票上回っての当選。選挙を振り返って。

 2003年の山川町長選に立候補した際には、「女の人が町長なんて」と女性に言われました。過去の選挙と比べて、今回は特に50代以上の女性の反応が熱かった。「やっぱり女の人がいかんとね」と言ってくれました。応援に来てくれた高井美穂県議と「時代は変わったね」と言い合いました。(理事を務める)診療所や支配人をしている「美郷の湯」で信頼を重ねたことも生きたと思っています。

 ―取り組みたいことは。

 県政が有権者にとって身近に感じられるよう情報発信していきたい。地元の雇用や経済発展につながる再生エネルギーの政策にも取り組みたいと考えています。

 ―今回の県議補選に出るのにいくらぐらいかかりましたか。女性の立候補者を増やすためには。

 多くの方がボランティアで協力してくれ、実際の支出額は100万円ぐらいでした。

 女性は「家族のために生きる」という(社会の)考えが根強い。意識の変化は遅いので、やっぱり(議席や候補者の一定数を女性に割り当てる)クオータ制が必要かなと思います。

【編集後記】

 「ほとんどの時間を店の中で過ごしているけれど、本棚を見ていれば社会の動きが見えてくる。最近はフェミニズムに関連する本がよく出てる」。書店に勤める友人がそう、話していました。

 「82年生まれ、キム・ジヨン」で描かれる抑圧の多くは、日本でも見られます。サークルの会長になりたい女子学生に「君たちはただサークルにいてくれるだけでいい」と言う男子学生、育児と仕事の両立に悩む妻とそんな心配からは解放された夫―。日韓両国とも、世界経済フォーラムの男女平等度ランキングで低位をさまよう「男女平等後進国」です。

 心の中のもやもやした思いを言語化したい―。出版され、読まれるたくさんのフェミニズム関連本は、そんな欲求の表れなのかもしれません。しかし、もやもやし続けるのも疲れます・・・。法律や社会の仕組みをアップデートするためにも、女性議員が増えてほしいと思います。